電気通信大学大学院の中根大介助教、学習院大学の西坂崇之教授らの研究グループは、ヒト肺炎の病原細菌が水流に逆らって動く「走流性」を示すことを発見した。マイコプラズマ肺炎の治療法に寄与することが期待される。

 マイコプラズマ・ニューモニエはマイコプラズマ肺炎の原因菌だ。この細菌は、人間の組織に付着して滑るように動きまわる「滑走運動」を行う。この運動は今から80年前に発見されたが、何のために動くのかは不明だった。

 研究グループは、マイコプラズマの生育環境中の水流に注目した。例えば、人間の喉の奥にある気管上皮には肺から喉に向かう一方向的な流れがあり、細菌が付着しても体外へと流される。しかし、マイコプラズマは流れに逆らって動けるのではないかと考えた。

 水流中での細菌の行動を光学顕微鏡で観察したところ、流れがないとき肺炎マイコプラズマは同じ場所をぐるぐると動いたが、流れを与えると流れに逆らって一方向的に運動した。この応答性は正の走流性と呼ばれ、魚などの高等生物に見られるが、肺炎マイコプラズマの走流性は今回初めて示された。

 その仕組は風見鶏が風上を向くのと似ている。マイコプラズマは流れを受けたとき、先端の膜突起部位で表面に付着したまま、自身のおしり側を回転させて、流れの軸に逆らうような向きに体を配置する。

 走流性はこの細菌に起因する感染症の予防・対策に寄与することが期待される。寄生性のマイコプラズマは宿主の表面から流されると単独では生存できない。流れに逆らうことで、生存に適した環境へと移動すると考えられる。今回発見された走流性が実際にどれほど感染プロセスに関与するかは今後の課題としている。

論文情報:【PLOS Pathogens】Cell shape controls rheotaxis in small parasitic bacteria

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