名古屋大学の研究チームは、腕帯(カフ)を必要としない血圧測定技術の開発に成功した。
血圧変化は、脳心血管病発症の大きな原因となることが知られており、特に家庭での自己測定血圧が重要視されている。しかし、現在の家庭血圧計に応用されている「オシロメトリック法」では、腕に帯状の腕帯(カフ)を巻くことが測定の必要条件となっており、これにより発生する限界(入浴や運動などの生活シーンでの測定不能、カフ締め付けによる睡眠中の不快感や測定誤差の発生)が指摘されてきた。
そこで研究グループは、カフ式血圧計の限界の克服を目指し、カフレス血圧測定技術(脈波から血圧を測定する技術)が臨床応用可能な精度を有するかを検証した。健常者および循環器内科へ通院中あるいは入院中の患者の血圧を、従来のカフ式およびカフレス式の同時測定によりデータ収集し、カフレス血圧値が世界標準規格であるIEEE標準規格の要求する試験で精度を満たすかどうかを評価した。
その結果、カフレス血圧値は、要求された全ての試験(①安静試験、②血圧変動試験(上昇・低下)、③長期再現性試験)における精度要求を達成したのみならず、睡眠中のカフによる不快感を有意に軽減することが明らかとなった。
カフレス血圧計の開発は、ウェアラブルデバイスの開発に直結し、重要な健康指標である血圧の様々なシーンでの「見える化」を可能とする。現在、日本に2千万人以上存在するという高血圧患者の脳心血管病予防のみならず、自己測定困難者の診察室外血圧測定が可能となり、遠隔医療システムの実現による予防医療への貢献が期待される。