名古屋大学の佐藤憲昭教授らのグループは、豊田工業大学、東北大学、豊田理化学研究所との共同研究により、超伝導になる準結晶を世界に先駆けて発見した。
固体は3種類に分類される。結晶は原子が規則正しく整列し、ガラスは「アモルファス」と呼ばれ、原子配列はランダムだ。「準結晶」の原子配列は一見乱雑だが、実際はある規則に従っている。このうち準結晶だけが超伝導を示すものが見つかっていなかった。超伝導になるためには、電子の間に引力が働いてペアーが形成される必要があることから、準結晶中の電子はペアーを作れないのではないかと考えられていた。
今回、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)の3元素を組み合わせ、高速急冷法により準結晶を合成。この試料を、希釈冷凍機を用いて0.04ケルビン以下の超低温にまで冷却し、種々の物理量を計測した。その結果、電気抵抗が0.05ケルビン(-273.1℃)付近で急激にゼロとなって磁化が減少し、さらに比熱が急激に増大した。このような超電導状態を示す特徴により、準結晶試料が0.05ケルビンという超低温で超伝導になることが明らかとなった。
さらに、絶対零度に近い超低温でしか超伝導が発現しないことに関して、詳細な研究を行ったところ、この転移温度(超伝導への転移が生じる温度)の低さが準結晶の特徴であることが判明。また、準結晶の超伝導は従来の超伝導とは異なるタイプのペアーを形成している可能性も示された。
今回の発見は、準結晶中の電子にも引力が働くことを明らかにしたという点で、重要な意味を持っている。準結晶の超伝導研究の始まりとされる今回の研究が、今後新型の超伝導の解明につながることが期待される。
論文情報:【Nature Communications】Discovery of superconductivity in quasicrystal