和歌山県立医科大学、北海道大学、兵庫医科大学の研究者らは、軽微な刺激で持続する強い痛みを作り出す物質Tmem45bを世界で初めて明らかにした。
リウマチ・手術・外傷およびがんなどの侵害受容性疼痛では、動いただけで痛い、触っただけで痛いなど、軽微な刺激で持続する強い痛みが出現する。この痛みの原因は明らかになっておらず、解熱鎮痛薬など一般的な薬で抑えることが難しいという。そのため現在はモルヒネなどの医療用麻薬に頼らざるを得ないが、それでも十分な鎮痛を得られないことがある難治性の痛みとされる。
本研究者らは、持続する強い痛みの原因物質を同定すべく、まずマウスを用いて、持続する強い痛みを伝える神経線維を突き止めた。次に、持続する強い痛みを伝える神経線維と伝えない神経線維に発現している物質の比較から、Tmem45bというタンパク質を発見した。
Tmem45bを有するマウスでは、炎症や創傷によって持続する強い痛みが出現した一方で、研究者らが作出したTmem45b欠損マウスでは、炎症や創傷があっても持続する強い痛みが出現しないことがわかった。すなわち、Tmem45bは炎症や創傷に伴って活性化し、持続する強い痛みを作り出す物質であると考えられる。
さらに興味深いことに、Tmem45bは脳内にほとんど存在せず、一部の末梢神経に特異的に発現していることがわかった。つまり、Tmem45bをターゲットとした痛み治療は、脳への作用を起こさずに鎮痛できることが期待される。現行の医療用麻薬は、脳内の痛み伝達に関係のない領域にも作用してしまい、呼吸抑制・眠気・嘔気・依存などの副作用を引き起こすことが大きな問題であるが、Tmem45bをターゲットとした鎮痛法は、これらの問題を解消する全く新しいGame Changerとなる可能性を秘めている。