九州大学と日本原子力研究開発機構の研究グループは、重陽子による核破砕反応から生成される原子核の種類や量を、高精度に予測できる計算手法を開発した。
原子力発電所などで生じる放射性廃棄物の有害度低減と資源としての再利用は、日本のみならず世界的な課題だ。
この課題を解決するために、放射性廃棄物に含まれる長寿命核分裂生成物(LLFP)に加速器で発生させた粒子を照射し、そこで起きる核破砕反応を利用して安定もしくは短寿命な原子核へと変換する手法が検討されている。核破砕反応とは、高エネルギー粒子を原子核に照射した際に原子核から陽子や中性子が放出される反応のことで、近年、照射する粒子として重陽子(重水素の原子核)を用いると核変換処理の効率が良くなることが示唆されており、注目を集めている。
重陽子を用いた核変換処理システムについて、最適な照射条件など詳細な検討をする上では、重陽子による核破砕反応でLLFPがどのような原子核にどれだけ変換されるのか、事前に予測しておくことが必要だ。しかし、重陽子は陽子と中性子がゆるく結合した粒子であり、他の原子核と反応する過程で容易に分解するという特性を十分に考慮できる計算手法が確立されておらず、これまでその予測精度は高くなかった。
こうした中、本研究では、重陽子による核破砕反応で重陽子が陽子と中性子に分解する効果を厳密に考慮できる計算手法を開発した。計算値を最新の核破砕反応実験の実測値と比較したところ、よく一致しており、核破砕反応から生成される原子核の種類や量を高精度で予測できることを実証した。
本成果により、重陽子を用いた核変換処理システムの研究が大きく前進すると期待される。