生命創成探究センター/生理学研究所の研究グループは、名古屋大学、北海道大学との共同研究で、脳にある約24時間リズム(概日リズム)の司令塔である神経細胞の集団は、低温にさらされるとリズムを刻むのを停止し、再び温めると時刻がリセットしてリズムを再開することを見いだした。
身体を構成する細胞や臓器は約24時間のリズムを持ち、心と体の健康に重要だ。その24時間のリズムを制御しているのは、概日リズム中枢と呼ばれる脳深部の視交叉上核の神経細胞集団の活動であることが知られている。
今回、マウスおよびハムスターの視交叉上核の時計遺伝子の転写リズムと細胞内カルシウムの概日リズムを同時かつ長期間計測し、視交叉上核の低温特性を解析した。
その結果、視交叉上核の時計遺伝子の転写と細胞内カルシウムの概日リズムは、22℃~35℃の温度帯域ではリズムを刻み続けるが、15℃程度の低温にさらされると停止してリズムが見られなくなった。また、15℃の低温から35℃付近の温度に戻すと、両方の概日リズムの時刻がリセットされ再度時を刻み始めた。
さらに、15℃では細胞内カルシウム濃度が上昇した状態でリズムが停止していること、また復温後には概日カルシウムリズムが速やかに安定なリズムを回復するが、時計遺伝子の転写リズムは数日かけて次第に概日カルシウムリズムに追随するようにリズムが回復した。
今回の研究結果は、哺乳類の冬眠に見られるような極端な低体温の状態ではリズムは停止すること、冬眠が終了すると時刻がリセットされてリズムが再開することを示唆している。この発見は、長年の謎である冬眠のメカニズムの理解に貢献するものと期待されるとしている。