熊本大学の安村明准教授らの研究グループは、ADHD児の診断を高感度に予測する手法の研究発表で、第48回日本臨床神経生理学会学術集会において、優秀演題賞を受賞した。本発表は、国立精神・神経医療研究センター、東京学芸大学、東京医科大学、山梨大学、鳥取大学、久留米大学との共同研究の成果だ。

 ADHDは不注意や多動性-衝動性という行動面の症状で気づかれる発達障害(神経発達障害群)の一つ。多彩な症状を示すためにワガママな子どもと周囲から誤解されやすい一方、学校・職場などの複数の場面での困り感(困っている気持ち)が増強し日常生活活動に強い支障をきたす。しかし、病気や障害の指標となる決定的なバイオマーカーがないため、診断は経験豊かな専門家による主観的な行動観察に頼っている。

 これまでの研究により、ADHDは大脳の前頭前野を首座とする抑制機能の障害があることが示唆されていた。今回の研究は、「逆ストループ課題」という抑制機能を調べる課題(抑制課題)を遂行している際の子どもの行動および前頭前野における脳血流の活動状態の変化のデータを基に、機械学習アルゴリズムを用いてADHD児の診断を高感度に予測することのできる手法を開発したもの。

 ADHDなどの発達障害は、加齢とともに精神疾患などの併存障害を伴うことが多いため、早期発見と早期の介入や支援、そして医学的治療が望まれている。今回の研究により確立された手法により、これまでにない簡便で客観的かつ高感度なADHD児の診断予測が可能となった。この成果は、臨床現場では診断補助や治療等の効果判定として、学校現場では早期発見のためのスクリーニングとして大きく貢献することが期待される。

論文情報:【Journal of Attention Disorders】Applied machine learning method to predict children with ADHD using prefrontal cortex activity: A multicenter study in Japan

大学ジャーナルオンライン編集部

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