筑波大学、弘前大学、東洋学園大学の研究グループは、社会的に孤立している客観的な状態は孤独感や抑うつ症状とほとんど関連がないが、主観的な社会的孤立感や孤独感が、抑うつ症状と関連することを明らかにした。
客観的に「人とのつながりが少ない」状態の社会的孤立と、主観的な否定的感情の孤独感は、いずれも心身に悪影響を及ぼす。一方、社会的孤立状態でも、孤独を感じずに健康的に過ごせる人々もいる。しかし、社会的孤立や孤独感がメンタルヘルスに影響するプロセスの総合的検討はほとんど行われていなかった。
今回の研究では、オンライン調査の回答者3315名(平均年齢50.50歳の男女)を対象に、社会的ネットワーク(家族や友人、近所の人とのつながりや接触頻度など)、社会的に孤立していると主観的に感じること(社会的孤立の認知)、孤独感が、抑うつ症状に影響するプロセスを検討した。
その結果、社会的ネットワークが少ない、すなわち社会的に孤立している客観的な状態そのものは、社会的孤立の認知、孤独感、抑うつ症状とほとんど関連がなく、社会的に孤立していると主観的に感じ、孤独感を持つことが、抑うつ症状と関連することが判明した。さらに、社会的に孤立していると当人が認知し、そこに孤独を感じることで、抑うつ症状は高まると分かった。解析により性別には関係なく、社会的に孤立していると感じることや孤独感を持つことが、抑うつ症状と関連すると考えられるという。
今回の研究結果は、社会的孤立の状態にある人々への支援は、人とのつながりを増やすだけでなく、個人の認識や考え、感情にも焦点を当てる必要があることを示唆していると述べている。