慶應義塾大学、東北大学、国立成育医療研究センターの研究グループは、日本人先天性甲状腺機能低下症患者を対象とした研究を行い、15番染色体の非コードゲノム異常が疾患発症に関わることを、世界で初めて特定した。
生命の設計図といわれるゲノムDNAは、タンパク質の構造情報が含まれるコード領域と、そうでない非コード領域に大別される。非コード領域(非コードゲノム)はヒトゲノム全体の98%以上を占めるが、機能がほとんどないと考えられてきたため、2024年現在、遺伝子検査では非コード領域を調べていない。
先天性甲状腺機能低下症は、甲状腺の形や機能に生まれつきの異常があり、甲状腺ホルモンの合成量不足により低身長や知的障害などが起きる先天性疾患。全世界で2,000〜3,000出生に1名と最も高頻度な先天性内分泌疾患とされる。
研究グループは今回、5世代13名の患者からなる原因不明の先天性甲状腺機能低下症の大家系を解析し、ゲノム異常の候補領域を15番染色体の約300万塩基対まで絞り込んだ。続いて、この大家系と小規模な原因不明家系(10家系)で候補領域の全ゲノム解析を行い、8家系に共通する非コードゲノム異常を特定した。
これまで先天性甲状腺機能低下症の親子例の90%以上が原因不明だったが、75%がこの異常によることが分かった。また、成人ではこのゲノム異常が腺腫様甲状腺腫の原因となることも判明。東北メディカル・メガバンク機構の試料の解析から、この異常の一般住民調査参加者における頻度は約12,000名に1名だった。
研究グループは、同様の研究手法を原因不明の遺伝性疾患に応用することで、非コードゲノムが持つ機能の解明が進むことが期待できるとしている。