東京大学大学院と立命館大学の研究グループは、ヒトでない対象が感情を持っているように感じる現象について、外見があまりヒトらしくない対象でも動きが加わると、見る者は強く「感情」を読み込むことを明らかにした。
ヒトでない対象が感情を持っているように感じる現象は「感情の読み込み」と呼ばれる。これまで、その現象に影響する要因として形状と動きは別々に研究されてきた。形状のヒトらしさと動きが組み合わさることで、生まれる感情の読み込みが変化する可能性を主張する研究は存在するが、実験的な検討はなされていない。
そこで研究グループは、この可能性を実験的に検討するために、形状のヒトらしさが異なる3つの対象(人型、しめじ、マッチ)について、動きがある場合とない場合を実験刺激として用意。各対象の静止画と動画について、「形状的にヒトらしいか」と「感情を持っているか」について質問紙で調査した。
その結果、「形状的にヒトらしいか」については、人型、しめじ、マッチの順に形状がヒトに似ていると評価された。一方、「感情を持っているか」については、静止画では人型がしめじより高く評価されたが、近づく動画ではしめじが人型よりも高く評価された。つまり、社会的な動き(実験では接近で抱擁、遠ざけて別れを意図した)がある場合、しめじでは感情が強く読み込まれたと考えられる。
この結果は、形状があまりヒトに似ていない対象でも、それが社会的な動きを示す場合に、見る者はより強く感情を読み込む可能性を示唆している。今後、感情豊かに見えるエージェント(ロボットやバーチャルキャラクター)のデザインに大きく貢献することが期待されるとしている。