東海大学医学部の野上達也准教授らの研究グループが国内の医師の漢方薬処方状況を調べたところ、8割以上が使用していることが明らかになった。
東海大学によると、調査は国内の医師685人を対象にオンラインで実施し、漢方薬の処方状況や課題を聞き取った。このうち、初期臨床医を除く652人の回答を集計したところ、全体の86.7%に当たる565人が漢方薬を日常の診療に使用していた。9.5%に当たる62人は過去に使用しており、処方経験がない医師は3.8%の25人しかいなかった。
多くの医師は8~9種類の漢方薬を症状などに応じて処方している。処方の理由は「西洋薬の処方で効果がなかった症状に漢方薬が効いた」「患者の要望」が多かった。症状では筋けいれん、便秘、更年期障害、倦怠感などが目立つ。
しかし、漢方薬を処方している医師の約半数は漢方医学的診断を考慮せず、西洋医学的診断だけを根拠に処方していることが分かった。回答者から「これでは十分な効果が期待できない」「患者の満足度が上がらない」などの懸念も寄せられている。
今回の調査で漢方薬の普及が進む実態が明らかになったが、野上准教授らは漢方医学的診断に基づく漢方薬処方の広がりが今後の課題だとみている。