京都大学大学院 医学研究科 社会疫学分野の上野恵子特定助教らの研究グループは、生活保護世帯の子どもたちを生活背景に応じて5つのセグメントに類型化、各集団の子どもたちに適した支援策をまとめた。現在、最適な支援プランを提示するシステム開発に入っている。
京都大学によると、研究グループは厚生労働省の2018年度生活保護世帯調査で10~15歳の子どもたち1,275名が回答した調査票データを分析し、生活背景の異なる小集団(セグメント)に類型化した。次に、NPO職員、児童精神科医、保健師、スクールカウンセラーなど専門家へのインタビュー調査を実施し、各セグメントの生活背景や特性(人物像)と、それぞれに適した健康・生活支援策について意見を収集した。
その結果、「自分で何でもできる子ども」、「施設にいる子ども」、「引きこもりの子ども」、「抽象的な質問に答えるのが面倒だと思う子ども」、「生活保護利用の世代間連鎖がある世帯の子ども」の5つのセグメントに分類することができた。
さらに専門家へ支援方法についてインタビューした結果を加え、身体的健康だけでなく、周囲の人々との関わり合いや他者から必要とされることなどを示す社会的健康、精神的健康を支える多様な支援策が示唆された。
・「自分で何でもできる子ども」(セグメント1)に「高等教育進学への経済的支援」
・「施設にいる子ども」(セグメント2)に「多様で豊かな楽しみを経験するための支援」
・「引きこもりの子ども」(セグメント3)に「継続的に交流できる家族以外の大人の存在」
・「抽象的な質問に答えるのが面倒だと思う子ども」(セグメント4)に「自身のことをいっしょに考えてあげる支援」
・「生活保護利用の世代間連鎖がある世帯の子ども」(セグメント5)に「家族全体への支援」
全国の福祉事務所では2021年から生活保護利用者の健康・生活支援事業を進めているが、事業対象は40歳以上の生活保護利用者で、子どもたちは対象になりにくい。このため、研究グループは生活背景に応じた支援策を提示するシステム開発を進めており、今後はより大規模なデータを用いた分析やセグメントの精度の向上を図るとしている。