2039年に、龍谷大学は400周年を迎える。
1639年に西本願寺に設けられた学寮を起源とする龍谷大学。受け継がれてきた歴史や伝統を守る一方で、仏教SDGsの推進やネイチャーポジティブ宣言の発出のほか、学部の移転・改組など、新たな試みや改革を進める龍谷大学が未来に目指すものは何か、安藤徹学長にお話を伺った。

 

龍谷大学が目指す未来の姿
20年をかけて実現する「構想400」

 仏教の「すべての者をおさめとって見捨てない=摂取不捨」という教えは、SDGsの「誰一人取り残さない」という考え方に通じる。龍谷大学が提唱する「仏教SDGs」の意義は、仏教とSDGsとを結び付け、現代の表現に読み替えることで、仏教への理解が深まり、次世代にも受け継いでいけるという意義がある。

 「18歳人口が減少する中で、大学の在り様も問われています。浄土真宗の精神を建学の精神とする本学はどうあるべきか、高い志と眼前の課題解決のバランスをどのように取るのか、将来の姿を社会に示す必要があります。歴史と伝統を重んじながらも、未来を切り開くため、受け継いだものを変革の原動力に変えて、伝統と創造のダイナミズムを実現したいと考えています」と安藤学長は話す。

 龍谷大学では、2039年の創立400周年に向けて「龍谷大学基本構想400(以下、構想400)」に基づく諸改革が進んでいる。1期4年の中期計画を5期にわたって積み上げる壮大な計画で、現在はその第2期にあたる。

キャンパスごとの学びを進化させる
「キャンパスブランド構想」

 「構想400」の具体的なアクションの1つに、キャンパスそれぞれの特色を打ち出す「キャンパスブランド構想」がある。

 深草キャンパスは2025年春、総合社会学科の1学科体制に改組した社会学部が瀬田キャンパスから移転するとともに、経営学部に新たに商学科が開設された。これにより、深草は社会科学系、瀬田は自然科学系、大宮キャンパスは人文科学系と、3キャンパスの個性がより明確になった。それに合わせて施設設備の大規模整備も進めている。深草のコンセプトは「深草を森にする」。これには、知と新たな価値を創造する「知の森」、緑あふれる環境とする「緑の森」、大学と地域とが支え合う「共生の森」、という3つの意味を込める。

 一方、大宮は龍谷大学発祥の地でもあり、図書館には国宝級の蔵書が揃い、龍谷ミュージアムにも近く、人文科学の学びの深化には最適な環境だ。新たに建てられた「黎明館」は、大学と付属平安高校・中学校が共用する施設で、一般利用可能なカフェもある。学校法人龍谷大学だからこそ実現できる「中高大連携」のはじまりの場としても位置付けられている。この黎明館のコンセプトとして安藤学長が考案した「つどい、つながり、つむぐ」は龍谷大学全体の目指す姿でもある。

「留学生も含めた学生、教職員、企業関係者、地域住民らが『つどい』、学びや研究を通してあらゆる生命や自然環境とも『つながり』、一人ひとりの未来や新たな歴史を『つむぐ』大学でありたいと考えています。こうした大学での学びの特徴を端的に表現すべく、『つどい、つながり、つむぐ』というフレーズをひねり出しました。さらに『つまずく』や『つちかう』、『つくる』、『つたえる』などを加えてもいいかもしれません。本学につどう学生が、学びを通じて様々な経験を重ねつつ、地域社会や世界の人々をも巻き込んで価値をともにつくり出す。多彩なつながりのなかで、途中つまずいたりしながらも、かけがえのない関係をつちかい、志をつらぬき、光り輝く未来の物語をつむぎ、つたえていく。こうした学びの醍醐味を存分に味わった学生は、『自省利他』の行動哲学を実践する『まごころ』ある市民として、社会変革の担い手になってくれるものと確信しています」と語る安藤学長。

 さらに瀬田には、2027年4月に「環境サステナビリティ学部(仮称)」「情報学部(仮称)」の2学部が新設される予定だ。それぞれ、先端理工学部の「環境科学課程」「知能情報メディア課程」を発展的に改組転換し、文理融合の学びを実現する。龍谷大学が培ってきた研究・教育・社会貢献の成果を基盤に、環境課題に向き合い、価値創造や社会変革を牽引するキャンパスとして、一層の充実が図られることになる。

「いま、社会では倫理観なきITによって様々な問題が起きています。情報系の学部は全国に多数ありますが、本学の建学の精神に基づく独自のカリキュラムによって、課題解決に向けた本学ならではのモデルを創出したいと考えています」

 また、環境サステナビリティ学部(仮称)では環境問題を最重要課題の一つと捉え、情報学部(仮称)と共創的に多様な知見を融合させることで、より豊かで魅力的な教育を実現する。さらに他の学部とも連携・協働することによって〝龍谷大学だからこそ〟といえる学びを確立していく計画だ。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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