お茶の水女子大学の三宅亮介講師と東京農工大学の村岡貴博准教授らの研究グループは、人工的にデザインしたペプチドを用いて、柔らかい小さな分子から、タンパク質に匹敵する巨大空間を作ることに成功した。
タンパク質などの生体物質は、その構成要素であるペプチドの柔軟な骨格を通じて、人工物では難しい高度な環境応答性の機能を実現している。中でも、ペプチドが作り出す柔軟な空間構造は、正確な分子認識や効率的な物質輸送や貯蔵など、生体になくてはならない役割を担っている。したがって、柔軟な骨格により人工的に空間を形成することは重要な技術の一つだと考えられるが、柔らかいもので作られた空間は壊れやすく、柔軟な骨格を用いて、大きな構造を組み立てることは非常に困難だった。
今回、同研究グループは、柔軟な骨格であっても網目状に組み合わせて安定化すれば、巨大な空間形成が可能になると着想し、金属配位結合と水素結合により柔らかい骨格の形状をコントロールすることで、非常に柔軟な構造を持つペプチド分子から、様々なサイズの空間構造を作ることに成功した。この構造は、全く同じ分子から、わずかな条件の違いを認識して10倍以上大きさの異なる数種類の空間形成が可能であった。
この成果から、目的に応じて空間を自在にデザインすることも期待できる。それにより、これまで困難であった高い効率性や省エネルギー性を示す複合機能を持つ人工たんぱく質の創出への展開が期待できる。