無機半導体と比較して有機半導体は、柔軟かつ軽量といった特徴をもち、フレキシブルデバイスなどへの活用が期待されている。半導体デバイスは、p型半導体とn型半導体を組み合わせて製造される。しかし、有機半導体としては、これまで主にp型半導体が作製されており、n型半導体は種類が非常に限られているという。
今回、芝浦工業大学応用化学科の田嶋稔樹教授は、n型の有機半導体を簡易に合成する新たな方法を開発したことを発表した。この手法は、多くのn型有機半導体開発に適用可能だといい、有機半導体の普及に向けた研究開発がいっそう加速することが見込まれる。
n型の有機半導体は、p型の有機半導体にフッ素を導入することで合成することができる。しかし、その合成の煩雑さから、安定した製造が困難とされてきた。一方、本手法では、ヘキサフルオロベンゼンを電解還元することで、特別な触媒や脱離基を必要とせず、簡易にペルフルオロポリフェニレンゲルを合成する。ペルフルオロポリフェニレンは、有機半導体として有用な導電性高分子を完全にフッ素化することに成功したもので、さらに、このゲルを乾燥および洗浄することで、無色透明の薄膜を合成できる。
合成された薄膜の原子組成を調べると、炭素60%、フッ素40%であることがわかり、架橋が少なく柔らかなペルフルオロポリフェニレンであることが明らか。さらに、元素マッピングでは、フッ素が膜全体に均一に分布していることも確認された。
n型有機半導体をより簡易に、より低コストで製造することを可能とした本手法について、今後、企業との共同研究により適用範囲を明らかにするとともに、ペルフルオロポリフェニレンゲルおよび薄膜をはじめとする生成物の用途探索を行う予定だとしている。