スペイン・カナリア諸島ラパルマ島のチェレンコフ望遠鏡MAGICが、ガンマ線バーストからの信号を観測することに成功したと、東京大学、京都大学、東海大学、ドイツ・マックスプランク物理学研究所などの国際共同研究チームが発表した。

 2019年1月14日20時57分03秒、強いX線放射を受けたNASAのX線観測衛星Swiftおよびガンマ線観測衛星Fermiは、その22秒後に世界中の観測施設にアラート(緊急連絡)を発した。MAGICもこのアラートを受け、40秒後には発生源を視野中心に捕捉し観測を開始した。最初の20分間で、およそ1000個の高エネルギーガンマ線信号を観測した。また、その最高エネルギーは1TeV(テラ電子ボルト、可視光の1兆倍)に達していた。

 他の光学望遠鏡の観測結果から、この高エネルギーガンマ線は、45億年前の、太陽の数十倍以上の質量をもつ恒星が、燃え尽きて重力崩壊し、ブラックホールになる際に生成されたガンマ線バーストであると推定された。地上のチェレンコフ望遠鏡がガンマ線バーストからの信号を捉えたのは史上初めてで、1TeVというエネルギーもガンマ線バーストとしては過去最高にあたる。

 ガンマ線バーストのエネルギーは、これまでは95GeV(ギガ電子ボルト)が最高で、シンクロトロン放射(高エネルギーの電子が磁場の中で円運動または螺旋運動をするとき、軌道中心方向の加速度を受けて電磁波を放射する現象)により説明することができた。しかし、MAGICの観測した放射のエネルギーは、そのおよそ10倍にあたり、シンクロトロン放射を超えるガンマ線の発生メカニズムがあることを明確に示している。

 現在、MAGICと同じ観測所に、さらに高性能のチェレンコフ望遠鏡が建設中で、稼働を開始すれば、一桁高い感度でより多くの高エネルギーガンマ線を観測することができるという。より詳細なデータから、ガンマ線バーストの理解が大きく進展すると期待される。

論文情報:【Nature】Teraelectronvolt emission from the γ-ray burst GRB 190114C

東京大学

明治10年設立。日本で最も長い歴史を持ち、日本の知の最先端を担う大学

東京大学は東京開成学校と東京医学校が1877(明治10)年に統合されて設立されました。設立以来、日本を代表する大学、東西文化融合の学術の拠点として、世界の中で独自の形で教育、研究を発展させてきました。その結果、多岐にわたる分野で多くの人材を輩出し、多くの研究成[…]

京都大学

「自重自敬」の精神に基づき自由な学風を育み、創造的な学問の世界を切り開く。

自学自習をモットーに、常識にとらわれない自由の学風を守り続け、創造力と実践力を兼ね備えた人材を育てます。 学生自身が価値のある試行錯誤を経て、確かな未来を選択できるよう、多様性と階層性のある、様々な選択肢を許容するような、包容力の持った学習の場を提供します。[…]

東海大学

2022年4月、全国7キャンパス23学部体制で学生の教育・研究活動を充実させました

東海大学は23学部・62学科専攻において、人文・社会から理・工学、航空宇宙学、医学、海洋学、農学に至る幅広い分野で研究を行っています。その領域は海底から宇宙にまで及び、現代文明の諸問題にあらゆる角度からアプローチすることが可能です。[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。