約6,600万年前に形成された巨大クレーター内部の掘削試料の分析で、衝突由来の堆積物の最上部に、小惑星物質が濃集していることがわかった。東京工業大学、海洋研究開発機構、東京大学、ブリュッセル自由大学、イタリア・パドバ大学などの国際共同研究グループが明らかにした。

 今回分析対象となったのは、白亜紀/古第三紀境界(約6,600万年前)に形成されたとされるメキシコ・ユカタン半島沖のチチュルブ・クレーター内部の掘削コア試料である。チチュルブ・クレーターは、白亜紀末の恐竜を含む生物大量絶滅の原因となった小惑星衝突の現場であり、国際深海科学掘削計画による第364次研究航海の研究対象となったもの。衝突を引き起こした小惑星由来の物質がクレーター内部にどのように分布しているかを明らかにするため、掘削試料に含まれる衝突由来の堆積物の詳細な地球化学分析を行った。

 その結果、衝突由来の堆積物の最上部に、小惑星成分に特有の元素である「イリジウム」を高濃度で含む層を発見した。その濃度は、上下と比べておよそ30倍も多かったという。また、イリジウムは、海水から堆積した粘土層の最上部に濃集していたことから、衝突後に小惑星物質を含む噴出物(衝突ダスト)が大気中に飛散・浮遊し、数年~数十年の間に降り積もった可能性を示唆している。

 イリジウムは、小惑星物質中に豊富に含まれるが、地球表層物質にはほとんど含まれない元素であることから、イリジウム高濃度層を鍵として、衝突地点と世界中から報告されているイリジウムを高濃度で含む堆積物の時間軸を揃えることが可能となる。このことは、小惑星衝突によって飛散した物質が全球へ拡散した過程を理解するための重要な手がかりとなり、恐竜絶滅前後の環境変動の解明にもつながる可能性がある。

論文情報:【Science Advances】Globally distributed iridium layer preserved within the Chicxulub impact structure

大学ジャーナルオンライン編集部

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