東北大学附属地震・噴火予知研究観測センター、東京大学地震研究所では、大西洋で発生した爆弾低気圧によって引き起こされたP波・S波を検出、震源情報を定量化することでその発生メカニズムを明らかにしたと発表、米科学誌「Science」に掲載された。
地球内部構造を知る上で、地震波を用いた「構造探査手法」の果たす役割は大きいが、その解像度は地震分布の偏りに制約されてきた。この問題を解決すべく、海洋波浪によって励起された脈動を利用して観測点間の構造を抽出する手法が開発され、実際に多くの地域で、地殻構造・上部マントル構造が決定されるようになった。しかしこの方法でも構造の推定はやはり観測点の分布によって制約されてしまう。
P波・S波といった「実体波」は地球深部を伝わることから、地球の内部構造を推定するために重要とされるが、未解決な問題が多く、S波の存在も予想はされているものの実際に観測はされていない。
2014年12月、爆弾低気圧が大西洋で発生し、イギリスやアイルランドに被害をもたらした。その際、海洋波浪により発生したP波は地球深部を伝わり日本にまで到達している。そこで同研究チームでは、地震計観測網「Hi-net」のデータを用いて、この時に記録された地震波を解析、海の波がどのように地震波を引き起こしたかを調べた。その結果周期5-10秒のP波を検出したと同時に、SH波・SV波という2つのS波について初めて検出できたという。
次に震源について調べたところ、その位置は低気圧の移動に連動し、等深線に沿って移動していることも分かった。さらに、より定量的に検証するため、海洋波浪モデルを用いてP波の理論的な予想値と比較した結果、震源位置・強さともに理論値および観測から推定した値と整合することも明らかとなった。ただしS波について定量的な比較は未だ難しく、今後、理論の高度化が求められる。
本研究では、嵐によって引き起こされた実体波が点源で表現できることが示された。今後世界各地で起こる強い気象現象の事例を集めてカタログ化し、特に南半球で地震がなく地震計もない地域の地球内部構造推定をめざしていくという。