東北大学、京都大学、東京大学は、国際共同研究によりニュージーランドの北島東方沖の沈み込み帯で発生するスロースリップの観測に成功。研究成果を米国科学誌「Science」に発表した。

 スロースリップとは通常の地震より遅い断層すべり速度で歪を解放する「ゆっくり地震」の一種。東北地方太平洋沖地震の直前にも観測され、本震時にスロースリップ域が大きくずれ動くことで、甚大な津波被害の一因にもなった。ただ、スロースリップのすべり域の大半は海底下にあるため、詳細については不明な点が多かった。

 ニュージーランド北島東方沖の「ヒクランギ沈み込み帯」では、年3~6cmの速度で太平洋プレートがオーストラリアプレートの下に沈み込み、プレートの境界付近ではスロースリップが18~24ヶ月周期で発生している。スロースリップによる地殻変動は、これまではニュージーランドの陸上で観測されており、地殻変動量は1~3cm程度、1週間ほど継続することが分かっている。

 今回日本・アメリカ・ニュージーランドによる国際共同研究では、この海域で海底圧力計を2014年に設置、2015年に回収に成功。解析したところ、地上での推定より浅い部分までスロースリップの断層が分布していることがわかった。これまで歪を蓄積できないとされていたプレート境界においても地震を起こす歪が蓄積されている可能性を示唆するものだ。

 今後は同様の圧力観測を継続しつつ、定常的なプレートの動きを調べるために海底GPS観測も行い、繰り返し発生するスロースリップの固有性を検証する予定。また今回の海域では、地球深部探査船「ちきゅう」による掘削も検討されている。スロースリップの断層物質を取得し、陸上と海底それぞれの観測から得られる知見と併せて、メカニズムの全容解明をめざすという。

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