3.質の高いアクティブラーニングを目指して

ここで一つ、筆者が実際に経験した本格的なALを紹介することにしよう。それは数年前に担当ゼミ生がサークルKサンクスに対してコンビニ弁当を提案した取り組みである。この取り組みでは、「コンビニで売れる弁当の企画」というテーマで、参加した3チームがそれぞれ半年ほどかけ、味、素材、価格、ネーミング、パッケージなど、あらゆる側面から議論を重ね、コンビニ弁当を提案した。

名ばかりのALであれば、企業に対する提案を行うだけで終わるかもしれない。あるいは、提案した企画がそれなりの評価を得ることができたならば(あるいは、得ずとも)、「あとは企業の方で商品化までやってほしい」というスタンスになるかもしれない。さらには商品化を達成した方が講義の成果として残せるという理由から、担当教員が提案の質や受講生の学びなど無視して「何とか商品化してもらえないだろうか」と企業に依頼するということすら起こるかもしれない。しかし、先述のように受講生に課題に直面させることが目的だとするなら、「もっと難易度の高い課題を克服させることはできないだろうか」と考え、企業と協力してその課題を捻出するということもできる。これこそが、質の高いALだといえるだろう。

サークルKサンクスとの取り組みでは、学生たちが提案した企画のうち一つは「商品化の見込みあり」ということで高い評価を得ることができた。そこで次にサークルKサンクスの協力のもと、「実際に自分たちの手で試作品を作り、それが販売できるものかどうか考えよ」という課題を与えることにした。食材を企業側が用意し、それを使って試作品を作る。その試作品をもとに販売価格を設定する。すると、彼(女)たちが考えた商品は販売価格1,500円前後が妥当という商品になってしまった。当然売れるわけがない。さて、どうするか。

カツまぶし

カツまぶし(筆者撮影)

※現在は販売されていません

 

彼(女)たちは具材の選定をし直し、1g単位まで用いる量を考え、調理方法を工夫し、トッピングの配置を熟考し、最終的に販売価格を480円(税込)にまで落とすことに成功した。当初想定していた販売価格を1/3まで下げるということの難しさは、商品企画に携わったことがある方なら想像に難くないだろう。

この学生たちはさらに自分たちでパッケージデザインを概ね考え、最終的な販売にまでこぎつけることができた。もちろん、作業中に学生の立場で分からないことは「自分たちから」企業の方々に相談し、その都度、解を得るというプロセスも経ていたということは言うまでもない。いわば、実際の企業人(商品企画担当者)が経験する課題の多くを学生のうちから経験できたのである(※2)。

※2:筆者が担当するゼミで取り組んだ他の活動については、ゼミホームページをご覧頂きたい。

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坂田 隆文

坂田 隆文

中京大学総合政策学部教授、博士(商学)、中京大学教育推進センター委員会能動的学修推進部会部会長。名古屋大学、名古屋市立大学、金城学院大学非常勤講師。マーケティング戦略論、流通論、商品企画論を主な専門とし、「面白さ」と「わかりやすさ」と「有益さ」という3つを重視した講義・研修で定評がある。近著に『1からのマーケティング・デザイン』(共編著、碩学舎)、『1からの商品企画』(共著、碩学舎)がある。近年では名古屋で若手企業人を集めた異業種交流勉強会を主宰するなど、活動の場を広げている。詳細は担当ゼミHP(http://www.sakataseminar.jp/)にて。