いずれの方法を採用するにせよ、こういった活動を行ったうえで再度改めて同じテーマでディスカッションをさせると、ディスカッションの質は飛躍的に高まることになる。あるいは、もちろん、事前にこれら3つの活動のうち一つ、あるいは複数を行わせてからディスカッションに参加させることもあるというのは、言うまでもない。

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坂田ゼミでのディスカッションの様子

さて、知識の提供ということでよく筆者が受ける質問のもう一つに、「ゼミのような少人数の場合と違い、大規模教室の講義ではALは難しいのではないか」というものもある。たとえば300人講義においてディスカッションやディベート、あるいは受講生による発表を行うのは難しいのではないかという思いが、このような質問の背景にあるようだ。筆者自身経験したことであるが、確かに、300人の講義でディスカッションを行うと、収拾がつかなくことがある(そして何より、あまりの喧騒で他の教室から抗議が出るということもあった)。さて、ではどうするか。

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筆者が担当する大規模講義

ALを文科省の定義どおり「学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称 」と捉えるならば、我々教員が工夫すべきは、一方向的な講義形式からいかに脱出するかということに尽きるだろう。そのための具体的方法としていえば、毎回の講義で感想文やレポートを書かせる、前回の講義内容を元に小テストを実施する、質問が出やすいように時間を割いたり講義内容を工夫する、講義中に何度も何度も受講生に質問を投げかけるなど、方法はいくらでもあるだろう。

付言するならば、これらの工夫をいかに深化させるのかということにこだわる必要がある。たとえば、単に感想文を書かせて終わりという場合もあれば、その感想文の内容を翌回の講義中に取り上げて指導材料にしたり(あるいは、「良い着眼点ですね」といった褒め言葉を述べて受講生のモチベーションを高めるための材料にしたり)、小テストで受講生の理解度が低いと思われるところは翌回に復習というかたちで再度説明を加えるといった工夫ができる。あるいは、提出された感想文に対して疑問・質問をコメントして返却することで、受講生が更に思考を深める契機を提供するということも可能だろう。いずれの場合にせよ、形式的に受講生が何らかの活動を行うということに留まらずに受講生の講義参加度合いを高める工夫ができると、多人数の講義でもALはいくらでも可能である。その意味で、ALの質を高めるためには拙稿(「何故、アクティブラーニングがうまくいかないか」)でも述べたアクティブティーチングこそが重要なのである。

また、ALに取り組み始めている多くの教員が、講義にALを取り入れる際には講義の「全て」を「アクティブ」にしなくてはならないのかと不安になっているようだ。しかし、もちろん、そのような必要はなく、受講生の学修・学習効果を考え、最も適したかたちでの参加を促すことができれば、ALとしては成功しているといえるというのが筆者の見解である。

シリーズ「アクティブラーニングの実効性における課題と解決方法」
第1回:アクティブラーニングのテーマはどう選ぶべきか
第2回:アクティブラーニングに座学は必要か
第3回:意欲の低い学生にいかにアクティブラーニングを行うか
第4回:アクティブラーニングにおける評価の難しさ

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中京大学

国際社会で活躍できる幅広い教養・深い知識・実践力を兼ね備えた人材の育成

10学部20学科を擁する全国有数の総合大学。教育力や研究力の向上、社会連携、国際化、卒業生連携の強化を推進しています。自ら考えて行動することのできるしなやかな知識人や、学術とスポーツのさらなる殿堂を築き上げ、実社会で活躍できる能力や実践力、豊かな人間性を身につ[…]

坂田 隆文

中京大学総合政策学部教授、博士(商学)、中京大学教育推進センター委員会能動的学修推進部会部会長。名古屋大学、名古屋市立大学、金城学院大学非常勤講師。マーケティング戦略論、流通論、商品企画論を主な専門とし、「面白さ」と「わかりやすさ」と「有益さ」という3つを重視した講義・研修で定評がある。近著に『1からのマーケティング・デザイン』(共編著、碩学舎)、『1からの商品企画』(共著、碩学舎)がある。近年では名古屋で若手企業人を集めた異業種交流勉強会を主宰するなど、活動の場を広げている。詳細は担当ゼミHP(http://www.sakataseminar.jp/)にて。