心理学を学んで身につく力
カリキュラムの特色と履修モデル
カリキュラムの第一の特色は、1年生から4年生まで一貫して、実証研究の具体的方法を学ぶことです。専門教育は1年生から始まり、必修科目では1年生で心理学の基礎的な知識と心理統計法・心理学研究法を学び、2年生では実験や検査などの実習で、データ収集・分析・論文の書き方など研究の実際について学びます。ゼミに所属する3年生では、これらをベースに仮説を立てデータを集め分析するなど、実際に研究を行い、4年生で卒業論文にまとめ、「明星大学心理学会」と題した学会形式の発表の場でその成果を報告します。
本学科の卒業生が就職に強いのは、この必修科目の学びの過程がそのままビジネススキルの養成につながっているからです。具体的には、
- 心理学の知識と方法論を学ぶことが、仕事において様々な問題に対処し、人間関係の諸問題を緩和したり改善したりする力につながる。
- 卒業研究に代表される科学的思考の下での実証研究が、論理的な文書の作成能力や、わかりやすいプレゼンテーションができる力を養う。
- 実験や検査にあたって、時間を厳守しプライバシーを保護することが、社会人としての基本的倫理意識やビジネスマナーを育てる。
ということになります。
第二の特色として、このような基盤の上に、新学部では「人間科学」「産業・社会」「発達支援」「カウンセリング」の4領域の履修モデルを設定します(※1)。これは、学生が自ら学びの重点領域を設定し将来を見据えて努力できるよう、そのために必要な選択科目を系統的に示したもので、専攻やコースではありません。積み上げ式の必修科目を横串で刺したもの、とも言えます。
職業的自立を支援するために、各領域を具体的な職業イメージとも連動させてありますが、重なり合う部分を多くし、心理学の全領域の基礎を偏りなく修得できるようにもしてあります。特定の狭い領域だけを学ぶだけでは、卒業後に現場に出たときに、現場の多様な問題に対応できず、社会では通用しないからです。重要なのは、基礎を幅広くきっちり修得した上で、それを特定の分野の深い学びへつないでいくことです。
学部化に当たり拡充したのが、「産業・社会」モデルのベースとなる産業・組織心理学の領域。従来から教育していた社会心理学と組合せて、産業・組織の領域に特化して拡大したのは、社会集団としての組織の特性の理解、職場環境の維持・改善、人材評価等人的資源の管理、消費者行動の分析など、特に現代の職業人にとっては、欠かすことのできないテーマに関わる領域だからです。
公認心理師の養成課程については、国による標準カリキュラムの検討がまだ始まったばかりですので、申し上げられることも限られてきますが、おそらく、上に強調したような幅広い学びが求められることになると思います。
既に申し上げた通り、心理学は、現代社会に生きる人間を科学的に探究し、その成果を現代社会の諸問題の改善・解決に役立てる実践的な学問です。心理学の教育を通じて、《社会とつながり未来をひらく》ことができる人材を育てたいと考える新学部に、どうぞ大いに期待してください。
※1 人間科学:人間の行動や認識を科学的に理解 商品開発、営業・販売職などを目指す
産業・社会:社会集団としての人間を理解 人事・企画・マーケティング職などを目指す
発達支援:幼児・学童の発達を臨床的に支援する スクールカウンセラーなどを目指す
カウンセリング:青年・成人へのカウンセリング 心理カウンセラーなどを目指す