学長特別顧問 インタビュー 後藤 俊夫先生

profile_001_gotou1969年名古屋大学工学研究科博士課程修了、工学博士。1986年名古屋大学教授。名古屋大学工学研究科長、副総長、高等研究院長。2005年中部大学教授。副学長、理事、全学共通教育部長等を経て、現在学長特別顧問。日本学術会議会員、応用物理学会会長、経済産業省等の審議会委員等歴任。文部科学大臣賞、科学技術政策担当大臣賞、応用物理学会論文賞、米国IEEEフェロー賞等を受賞。専門分野は、現在の宇宙航空分野において不可欠な基盤技術となっている光・電子情報分野。日本学術会議では、宇宙航空分野を包含する総合工学委員会の委員長を務めて、わが国の同分野の動きや発展を俯瞰してきた。愛知県立旭丘高等学校出身。

ここ数年、日本の航空宇宙産業に対する期待は急激に高まっています。MRJに象徴される航空機だけでなく、打ち上げ成功確率の高い日本のロケットも、世界的な信頼を集めています。日本の宇宙航空産業は、戦後長らく先進国アメリカやフランスに後れを取ってきましたが、漸く脚光を浴びるようになり、国も日本の未来の基幹産業と位置付け、そのための人材養成にも注目し始めたのです。

宇宙航空産業は自動車よりもさらに広い裾野を必要とし、大手メーカーだけでは成り立ちませんから、地域の中小企業の育成も急がれます。人材も、これまでは設計や新しい技術開発にかかわる一部の研究者で十分だったものが、今後は、製造現場のリーダー、中小企業のリーダーなどが大量に求められるようになると予想されます。

一方、大学における航空宇宙分野の教育組織は現在、旧帝大系のいくつかの大学と関東の私立大学数校に置かれているだけで、中部地区においては名古屋大学にあるだけ。しかも定員はわずか20名程度です。そこで本学は、工学部として創設以来蓄えた力と地の利を活かすべく、2018年に宇宙航空理工学科の開設を目指すことにしました。定員は80名、 MRJの開発が予定通り進めば、卒業生はその量産期に立ち合えるはずです。

宇宙航空理工学は総合工学に属します。機械、材料から電気・電子、情報まで、従来型の専門教育を受け、要素技術を身に付けた上で、全体をシステムとして統合できる素養が求められます。このようなエンジニア育成に最も適しているのが産官学連携教育。

大学で航空機は組み立てられないように、大学内の生産技術は限られています。教員構成も、近年の技術革新を反映させて、これまでの機械、材料中心の構成から、電気・電子、情報系の比重を増やしますが、実用技術まで全てを教えられる者は少ない。そこで大学では必要な基礎を学んだ後、2、3年次あたりからは、実際に企業の製造現場に出向き、工場見学とともに工場実習を行います。また企業の担当者を客員教授に迎えた講義を増やすなど、実用技術の教育を大学の外のリソースで賄おうと考えています。こうすることで基礎力と即戦力を兼ね備えたエンジニアを養成しやすくなりますし、就職、採用へ向けてのマッチングも向上し、既存の学科の教育改善への波及効果も期待できます。

宇宙航空理工学科の開設を機に、私たちは、21世紀の工学の課題である総合化、統合化に挑戦することで、工学部の活性化だけでなく、日本の工学教育全体の次なる発展にも寄与したいと考えています。

 

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