薬の正しい使い方教育を広めて医療を変える

“病は医者に治してもらうもの”。そんな考え方が未だに根強い日本だが、世界ではセルフメディケーションという概念が主流。“自分の健康は自ら守る”人を増やすことは、日本の医療制度を維持する上でも急務といえるだろう。

しかし、ドラッグストアや薬局で手に入る一般用医薬品でさえ正しく使用できていないという現状がある。“早く治そうと風邪薬をまとめて飲む”はもちろん誤りであり、“手を洗わずに目薬をさす”も正しい使い方ではない。

薬の適切な使用方法を理解し、知識を深めることは、自分の健康に関心を持つ動機づけになる。そんな狙いから始まったのが、帝京大学薬学部主催の『わくわくお薬教室』である。小学校3〜5年生とその保護者を対象に、板橋キャンパスで毎年春休みと夏休みの2回開催され、今年で5年目を迎えた。

薬学部の教員と学生スタッフが中心となって企画・運営され、当日は“くすりを使うときの12の約束”をテーマに、正しい手洗い方法、目薬の正しい使い方などを指導。対象が小学生であるだけに、好奇心を刺激する実験を通した“参加体験型”の教室である点が特長で、創意工夫が2時間のプログラムに散りばめられている。開催の経緯を、監修する薬学部の齋藤百枝美教授に尋ねた。

「例えばフランスでは、小学校から高校まで一貫した薬教育が行われていますが、日本では現在小学校には導入されていません。また、その保護者も思い込みや誤解をしたまま我が子に薬を使用している場合があります。薬に関する知識は、生涯にわたって必要になるもの。薬の正しい使い方のルールが社会に浸透すれば、医療が変わる。そう考えています」

参加者の満足度はきわめて高い。実施後のアンケートには、保護者の「手洗いが思っていたほどできていないことに驚きました」「カプセルの中だけ出したり、大きな錠剤を砕いたりして服用してはいけない理由が初めてわかりました」といった感想が綴られていた。齋藤教授は、「子どもたちにとっては、この教室が薬学の一端に触れ、薬剤師の職能を知るきっかけになれば嬉しい」と期待を膨らませる。

薬剤師会や関係者からの問い合わせや視察も少なくないというこの取り組みは、日本にセルフメディケーションを根付かせる草の根活動といえる。健康リテラシー教育によって『未来を元気に』という想いが、その原動力となっている。





01.スライドを見せながら解説。ゆっくりと語りかけ、挙手や意見を求めながら進む。
02.サポートする学生にとっても、患者さんを想定した貴重な機会に。
03.薬に関心を持ってもらう工夫にも余念がない。
04.錠剤について学ぶ実験。外見は同じでも溶け方が違うことに興味津々。
05.洗い残した部分が光るチェッカーや、手洗い体操が収録されたDVD観賞を経て、正しい手洗いをマスター。
06. 企画・運営に携わる薬学部の教員と学生スタッフ。
(撮影/戎谷康宏)

帝京大学
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大学ジャーナルオンライン編集部

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