2021年度入試の結果については、すでに多くのメディアで詳しい報告がされています。大学入学共通テストの平均点アップ、難関国立大学の堅調な人気、私立大志願者数の大幅な減少などいくつかのポイントがありますが、今回は2月後半から3月にかけて実施される私立大二期入試について考えます。定員超過率の厳しい制限のため、各私立大学は、追加・補欠合格に加えて二期入試も入学者数の調整機能として位置づけてきました。しかし、受験人口の減少もあり、その役割にも変化の兆しが見られます。

 

私立大入試の志願者数は大きく減少、志願者数が半減した大学も

 今春の入試結果について、河合塾の入試情報サイトKei-net(https://www.keinet.ne.jp/)でも詳しく解説されています。国公立大学の堅調な人気、資格系学部の人気、難関国立大の人気など、感染症対策のために2次試験を取り止めた一部の大学の志願者減少などは見られますが、国公立大学にとって高大接続改革と受験人口の減少による影響は表面上は小さく見えます。それに対して私立大は志願者数の大幅な減少と合格者数の増加により、昨年に続いて倍率が低下しています。受験人口の減少と一人当たりの併願校数の減少がそのまま影響していると言えます。

 代々木ゼミナールの入試情報サイト(https://www.yozemi.ac.jp/nyushi/)を見ると1万人~2万人規模で志願者数が減少している私立大も数校見られます。ここまで志願者数が減るとさすがに打てる対策がほとんどありません。

 こうした志願者数の減少は大学にとって大きなダメージですが、減少数よりもむしろ減少率の方がより大きなダメージです。中には昨年と比べて志願者数が半減している大学もあります。一般選抜の志願者数が昨年の半分になるというのは、一般社会から見るより、学内でのインパクトは極めて大きいものがあります。多くの場合、対策のためのプロジェクトや会議体などが立ち上がり、その事務局となる入試・広報担当のセクションが、かえって対策を練る時間が無くなるなどのネガティブスパイラルが見られることもあるのです。

【参考】代々木ゼミナール 志願者数減少20大学
https://www.yozemi.ac.jp/nyushi/shiritsu/data/gensho20_2021.pdf


 

私立大二期入試の減少率は一期入試を大きく上回る

 河合塾の入試情報サイトKei-netを見ると、私立大入試の志願者数は前年と比べて、50万人以上減少しています。延べ数とは言え非常にインパクトのある減少数です。もちろん各大学のメインとなる一期入試の減少数が大きいのですが、減少率で見ると一期入試が前年比87%に対して、二期入試は72%とさらに大きく減少しています。ここ数年で最も二期入試の志願者数が多かった2年前から見れば10万人以上の減少です。倍率も低下しており、来年の入試でもさらに低下すると見られます。

 現在、私立大学の定員超過率に対して厳しい制限が加えられています。そのため、各大学は追加・補欠合格に加えて二期入試も入学者数の調整機能として位置づけてきました。一期入試の合格者数を減らし、その代わりに何回も追加合格を出すという調整方法が主でした。受験生からの見ると困ったことですが、大学の立場から見れば他に方法がありません。また、一期入試の合格者数減少による倍率アップと難化によって、二期入試の志願者数も増えていました。

 それが人口減少による大学志願者の実人数減少により、一気に状況が変化しました。一期入試での合格者数の減少(絞り込み)も落ち着き、合格者数も昨年から延べ7万人以上も増加しています。こうなると二期入試を受験する生徒数があまり残っていません。今後は受験生にとって二期入試は、一期入試で合格大学を得た後に、二期入試を実施している有力私立大に再挑戦するための機会となっていくでしょう。こうした一部の有力私立大を除き、多くの大学は二期入試で入学者を得ることが難しくなっていくことが考えられます。

【参考】河合塾 2021年度入試を振り返る 私立大 全体概況https://www.keinet.ne.jp/exam/past/review/private.html

 

今後の国公立大学の募集人員は総合型選抜にシフト

 さらに影響すると見られるのが、国公立大学の総合型選抜・学校推薦型選抜の動向です。文部科学省のまとめによれば、2021年度入試での国公立大学の募集人員は、少しずつですが総合型選抜にシフトしています。

 募集人員の推移を見ると2019年→2020年は356名増加(募集人員合計5,559名)、2020年→2021年は1,598名増加(募集人員合計7,157名)となっています。国公立大学全体の13万人の入学定員から見ればまだ影響は小さいかも知れませんが、学校推薦型選抜と合計すると27,000名を超える募集人員規模にまでなってきています。

 そして、今後も増えていくことが予想できます。これらの生徒は合格すれば私立大の一般選抜をほぼ受験しません。つまり、私立大から見れば、人口減少による大学志願者数の実人数減少だけでなく、国公立大学の入試施策による一般選抜志願者数の実人数減少の影響もあるということです。

 2022年度入試では、北海道大が総合型選抜のフロンティア入試を拡大します。金沢大も超然特別入試を拡大、九州大でも学校推薦型選抜を新規実施する学部があるなど、すでにいくつか動きが見られます。受験生にとっては、ますます努力が報われる受験環境が整いつつあります。

【参考】文部科学省 国公立大学の入学者選抜 令和3年度入学者選抜について
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senbatsu/1412102_00003.htm

 

神戸 悟(教育ジャーナリスト)

教育ジャーナリスト/大学入試ライター・リサーチャー
1985年、河合塾入職後、20年以上にわたり、大学入試情報の収集・発信業務に従事、月刊誌「Guideline」の編集も担当。
2007年に河合塾を退職後、都内大学で合否判定や入試制度設計などの入試業務に従事し、学生募集広報業務も担当。
2015年に大学を退職後、朝日新聞出版「大学ランキング」、河合塾「Guideline」などでライター、エディターを務め、日本経済新聞、毎日新聞系の媒体などにも寄稿。その後、国立研究開発法人を経て、2016年より大学の様々な課題を支援するコンサルティングを行っている。KEIアドバンス(河合塾グループ)で入試データを活用したシミュレーションや市場動向調査等を行うほか、将来構想・中期計画策定、新学部設置、入試制度設計の支援なども行なっている。
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