入試について

 先ごろ、10年近くに及んだ大学入試改革論議は、そこで示された改革案を各大学が個別試験の中で実現することと結論付けられたようだ。もちろん入試改革が止まったわけではない。ただ現段階では、個別試験が重要であるということ以外にコメントはできない。選抜方法の多様化については、たとえば教員志望者が受験する教育学部では、教員になりたいという意欲も含めて総合的に評価するのはいいと思う。一方、理工系では、たとえば一般的に数学のできない物理学者はいないように、学部によって必要な学力を担保しそれを測る入試を考えていきたい。

 また、本学の学生が首都圏にある私立大学の学生と比較して大人しいことを捉えて、理系でもアピール能力、コミュニケーション能力を入試で問うようにしてはどうかというような意見も学内にあるが、コミュニケーション能力は学会での発表の機会を増やすなど、大学へ入ってからでも鍛えることができる。入試方法は、あくまで育てたい学生像から考えるべきだし、入試だけではなく、入学以降の教育改革にも引き続き力を入れていきたい。

 

 

受験生へのメッセージ

 知の統合と世界水準の研究大学を目指しているから、しっかり学問、研究に打ち込みたいという人に目指してほしい。環境は抜群。新たに本学の名称の付いた駅(※5)もできて東京へも直結するようになり、首都圏生活に触れることもできる。

 私自身の受験時代を振り返ると、浪人時代も含め様々な思い出はあるが、やはり大事なのは大学へ入ってからだとつくづく思っている。大学でできることは勉強だけではない。入ってから楽しく大学生活を送れるように、けして受験をゴールとは思わないことだ。

 高校、大学時代を通じて勧めたいのは読書。乱読でいい。私は学校の勉強では、数学・物理は好きだったが本ばかり読んでいた。しかしそれが今、大いに役立っている。

※5 羽沢横浜国大駅:2019年11月30日開業。相鉄、JR直通線の共同使用駅。

 

 先進的な文理融合を図る大学院『先進実践学環』は、「応用AI」「社会データサイエンス」「リスク共生学」「国際ガバナンス」「成熟社会」「人間力創生」「横浜アーバニスト」の7つのユニークな研究テーマを設け、文系の学生は理系を、理系の学生は文系を学べるというように、これまで縦割りの多かった大学院に横串を刺す。

「もちろん他大学にも『学部・研究科等の組織の枠を越えた学部プログラム』はあるが、学年定員42名と規模が大きい」と梅原学長。学部教育でも経済・経営の専門性と高度なデータ処理・統計分析を修得した人材を育てるDSEP(DataScience教育プログラム)、法学を中心に経済、経営、データ分析などを幅広く学ぶLBEEP(Lawcal Business Economics教育プログラム)が今春からスタートし、経済学と経営学の両方の専門性と英語による実践的コミュニケーション能力を育成するGBEEP(Global Businessand Economics 教育プログラム)なども以前から開講している。ただ、「いずれにおいても専門性は担保したい。そうでないと大学で学ぶ意味がない」と梅原学長。

 

横浜国立大学学長

梅原 出先生

1987年3月富山大学理学部 卒業、1989年3月同大学院理学研究科修士課程 修了。1992年3月筑波大学大学院工学研究科博士課程 修了。1992年4月横浜国立大学工学部 教務職員、1994年4月同 助手、2000年7月同助教授、2009年10月横浜国立大学大学院工学研究院教授、2019年4月横浜国立大学 理事(研究・評価担当)・副学長、2020年4月同(研究・財務・情報・評価担当)・副学長。2021年4月より現職。専門は固体物性物理学‐超伝導、磁性。桃山学院高等学校出身。

 

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大学ジャーナルオンライン編集部

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