実践的な経験と思考を養う課題解決型学習

 演習科目では、PBL(Project Based Learning =課題解決型学習)形式が中心だ。1〜2年次の入門演習を経て、3〜4年で本格的な演習を行う。トヨタ自動車やNTTドコモ、帝国データバンクなど、連携する約50社の企業や自治体の生データを利用して企業の課題解決をめざす実践的な演習も用意されている。

 「課題は、小売店のクーポン利用による効果といったマーケティング系からレセプトデータによる医療分析までさまざまです。学生からは、課題を解決しようという使命感や熱意が伝わってきますね。企業の社員が講師を務める講義で生の現場の声が聞けることも、大きな刺激になっているようです」と椎名学部長は話す。

 連携企業との共同研究を通じて実践感覚を磨く学生も多く、知識が活かせる業種は幅広い。2021年3月には第1期生が卒業したが、データサイエンティスト志望だけでなく、仕事にデータを活用できる強みにしようと考える学生も多いという。また大学院には、20人前後が進学した。データ分析やインターネット集客支援を行うベンチャー企業を立ち上げた学生も現れるなど、蒔かれた種は少しずつ花開いているようだ。

 

 

滋賀大学は、文部科学省から2017年に「数理及びデータサイエンスに係る教育強化」の拠点校、2022年には「数理・データサイエンス・AI教育の全国展開の推進」の拠点校として選定され、データサイエンス教育の普及にも取り組んでいる。現在は、大学生や研究者向けの教材制作を始め、動画配信システム「MOOC(ムーク:Massive Open Online Courses)」では、誰でも視聴できるデータサイエンス学部教員による講義も公開。2022年9月17日までは「高校生のためのデータサイエンス入門」も無料で公開されている。 データの活用技術を持つ人材の必要性は、政府のいくつかの戦略会議や省庁でもすでに認識されている。ビッグデータの活用など未来の産業や事業開発などに不可欠なデータサイエンス分野。その分野を滋賀大学とその卒業生が今後を担っていくことだろう。

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滋賀大学

「琵琶湖世界 BIWAKO Cosmos」から世界へのつながりを拓く

師範学校の時代から140年余、伝統に支えられ、豊かな人間性とグローバルな視野を備えた専門性の高い職業人の養成をしている。2017年にデータサイエンス学部が新設。企業課題を踏まえた協働研究で価値創造など多彩な研究を行い、文理融合型大学への転換を進めています。それ[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

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