全19言語が学べる外国語学部と、国際貢献学部の2学部を設置する京都外国語大学。今の時代だからこそ必要とされる外国語教育を目指し、国際観光都市・京都ならではの学びを展開しています。

 

他者や異文化を理解する「平和」につなぐ外国語教育

 「日本語で外国語大学と聞くと、外国の言語だけを学ぶ学校をイメージする人も多いと思いますが、一度、京都外国語大学の英語表記を確認してみてください」と話すのは、京都外国語大学外国語学部長の小野隆啓教授。たしかに英語表記は「Kyoto University of Foreign Languages」ではなく、「Kyoto University of Foreign Studies」になっている。
「これは、本学が単に言語を学ぶ学校ではなく、言語を通して、それぞれの言語圏の歴史や文化、政治、経済などを多角的に学ぶ大学であること。そして、それらの学びにより地球規模の視点で、ものごとを捉えたり、考えることができる力の修得をめざしていることを示しています」と小野教授は続けた。

 京都外国語大学の建学の精神「PAX MUNDI PER LINGUAS」には、「言語を通して世界の平和を」という願いが込められている。前身の京都外国語学校が誕生したのが1947年。第二次世界大戦が終わり、世界の平和を願い、そして、外国との平和な交流を望んだとき、相互理解を図る手段として、コミュニケーションの重要性を再認識し、そのための語学力と国際社会を理解する教育が必須であると考えたのは必然だろう。その思いが、今、あらためて心に響く。建学の精神を「パックス ムンディ ペル リングアス」と、あえてラテン語にしたのも、ここで学ぶ言語が英語をはじめとする使用人口の多い言語だけではないことを表している。外国語学部で学べる言語は、日本最多レベルの19言語に及ぶ。
 

 

街や訪れる人にも学ぶ「京都」というキャンパス

 京都外国語大学が位置するのは、古都「京都」。日本の伝統や文化を身近に感じることができ、訪れる外国人のさまざまな言語が飛び交う国際色豊かな街、金閣寺や二条城、清水寺など、17の世界遺産を有し日本を代表する観光都市だ。街全体が外国語を学ぶためのキャンパスともいえる。これほど学びに適した環境がほかにあるだろうか。

 京都外国語大学では、フリーガイドクラブ(FGC)という外国人観光客向けにガイドを行うクラブが古くから活動している。外国語を学ぶ際に大切なのは、学習者自身が発信したい内容や情報、伝えたい思いをもっているかどうか。コロナ禍を乗り越えれば、国際観光都市の京都なら、ガイドという活動を通して、発信したくなる情報にも、伝えるべき外国人にも事欠かくことはないだろう。このような実社会とつながる学びを、京都外国語大学はカリキュラムにも積極的に取り入れていく予定だ。

 2018年に新設された「国際貢献学部」も、「京都」ならではの「理論」と「実践」の両輪で学びを展開している。学びの核となる「コミュニティエンゲージメントプログラム」では、国内外の地域コミュニティで、そこで生活する人々と協働し課題解決に取り組む。京都であれば、伝統産業を営む企業や旅館での業務を体験しながら、京都の歴史や産業、文化を理解することができる。

 

 

枠にとらわれないマルチリンガル教育ボーダーレスな京都外国語大学の学びは

 京都外国語大学の学びを一言で表すなら「ボーダーレス」。学科に捉われることなく専攻語以外の言語も修得できる。なかでも英語を軸にもう1つの外国語を同時に学ぶ「2言語同時学習」は、毎回、驚きと発見に満ちた内容で学生からも好評だ。英語圏の留学生と英語圏以外の言語圏の留学生と日本人学生、さらに英語教員ともう一つの言語の教員2名のティームティーチングで授業を受けるものもあれば、英語とフランス語では映画を教材に使ったり、英語と中国語の授業では、3人1組で両端の学生がそれぞれ英語、中国語の話し手となり、中央の学生が2言語の通訳を行うことで語学力を鍛えたりと、それぞれの言語の特徴を生かし、言語によって授業内容もバリエーションに富む。

 英語が専門の小野教授のゼミにも、毎年、フランス語学科やドイツ語学科などの他言語を専攻する学生が大勢集まってくる。専攻語と英語との比較論を書くためだ。
 
 コロナ禍でも学びを止めぬよう、教員たちは工夫をこらしてオンライン授業に取り組んだ。海外の提携校とのオンラインによる協働学習なども積極的に進め、教育力を高めた。それらの努力は、「確かな語学力を伸ばす授業」「国際理解を深める授業」となって実を結んでいる。

 小野教授は、「私自身、大学に入学当初はあまり勉強に熱心ではありませんでした。しかし3回生の終わりに、アメリカの言語学者であるノーム・チョムスキーの存在を知ってすっかり傾倒し、以来、英語力は自分でも驚くほど伸びていきました。ですから『好きこそものの上手なれ』、外国語教育ほどこの言葉がぴったりくるものはないように思っています。私にとってのチョムスキーや、外国語の学びが面白くなるきっかけが、京都外国語大学のそこかしこに転がっています。皆さんも、それと出会うために、まずは初めの一歩を踏み出してください」と話した。

 

京都外国語大学

経験で成長し・挑戦で飛躍する、本物の学び「コミュニティエンゲージメント」

1947年「PAX MUNDI PER LINGUAS~言語を通して世界の平和を~」を建学の精神に創立。国際社会の一員としての責任を自覚し、教養豊かな魅力ある人間として力強く生きていくための総合的な力を育成しています。学科の枠を越えたボーダレスな学びで多言語・[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

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