京都女子大学は、2023年4月にデータサイエンス学部の開設(認可申請中)を予定している。設置の背景や学びの特徴を、竹安栄子学長と京都女子大学データサイエンス研究所所長で新学部学部長に就任予定の栗原考次教授にお話を伺った。

 

 

京都女子大学が挑戦するデータサイエンス
女性データサイエンティスト育成の背景

 京都女子大学は、2020年に創基100年を迎え、新たな100年に向けた第2次グランド・ビジョンを策定。その中のトピックのひとつがデータサイエンス学部の設置構想だ。

 現在の現代社会学部にも情報システム専攻でデータサイエンスを学ぶ基盤はあったが、時代の変化に合わせて新たな価値を創造する人材の育成を目指し、学部等の改革を進める中で、数学の知識も必須とした文理融合型の新学部「データサイエンス学部」の設置に取り組むとした。

 ジェンダー平等の実現という目標を掲げる京都女子大学は、未来をつくる学問、文理融合型のデータサイエンスへの挑戦を大きな使命ととらえる。

 「これからの社会は、あらゆる場面でデータの分析・活用が進み、それらをもとに新たな価値が創造されていくでしょう。しかし、その分野に女性が少なければ、女性に関する課題が置き去りにされてしまうことが危惧されます」と、竹安栄子学長は新たな学部の設置背景ついて語った。

 

データサイエンスを「丁寧に」身につける

京都女子大学では、データサイエンスを「丁寧に」身につけることに重きを置く。

 栗原考次教授は、「データサイエンス学部の学生には、データを読み解き、データを活用できる人材として、あらゆる業界に羽ばたいていってほしいというのが私たちの願いです。ですから、いわゆる文系のみなさんも、数学が得意ではないからとあきらめないでください。文理融合型の学部として間口を広げ、入学前教育や入学後の補習など、手厚いサポートで『丁寧に』データサイエンスが学べる環境を整えています。協定校であり、2017年に日本で最初にデータサイエンス学部を設置した滋賀大学の大学院生にティーチングアシスタントとして協力していただくことも検討中です」と、話す。

 身につけてほしいのは、データサイエンスを社会課題解決や新たな価値の創造につなげる力だ。そのために、カリキュラムは「統計学」「社会科学」「情報学」の3領域で構成し、「統計学」「情報学」をベースに、経済学や経営学、社会学などの社会科学について学ぶ。

 単にITスキルを身につけることが目的ではなく、身につけた能力を活かし、さまざまな分野で意思決定に関われる、そういう人材を輩出していくことが、京都女子大学のデータサイエンス学部の目指す姿だ。そのために、身近な課題を発見し、その解決方法を探る課題解決型の学習(PBL)も導入、地元の企業や行政機関からゲストスピーカーを招いた授業も予定している。

 竹安学長は、「今、自分が学んでいることが、実際の社会問題の解決にどのようにつながっていくかを意識しながら学び、実践力を鍛えていってほしいと思っています」と、学生への期待を述べた。

 さらに、データサイエンティスト協会とも連携し、データサイエンスの第一線で活躍する女性をはじめ、さまざまな講師が講義を担当する予定だ。
「実際に社会で活躍する講師の方々から直接聞くお話は、学生たちの将来のビジョン形成に役立ち、モチベーションアップにもつながるはずです」と、栗原教授も続けた。

 

次の100年に向けて
 「社会の本音を読む」新たな価値を創造できる人材を

これまで文系学部が中心だった京都女子大学に、文理融合型の新学部が誕生することで、学部横断の研究や、大学全体の教育・研究の幅が広がり、深まることが期待されている。家政学部の食物栄養学科とは『女性の健康』をキーワードに、発達教育学部の児童学科とは『保育』、といったようにさまざまな学部とデータを蓄積・分析・活用した研究への連携・展開が考えられる。
 
 今回の新学部設置にあたり、京都女子大学に招致された栗原教授は、学生への期待を口にした。「本学は、非常に意欲的な学生が多い。ぜひ、これから京都女子大学を目指す学生のみなさんにも、この分野における女性パイオニアになるんだという強い意志をもって、データサイエンス学部を志してもらえたらと思っています」

 竹安学長は、「すでにさまざまな企業様から熱いお声かけをいただいています。民間企業から行政、教員など、あらゆる業界で活躍できる力がきっと身につきます。ぜひこの新しい学びにチャレンジしてみてください」と、データサイエンス学部の可能性を示した。

 新たな100年をスタートさせた京都女子大学。今後、データサイエンス学部から、「社会の本音を読み、よりより未来をつくる」そんなデータサイエンティストの登場が期待される。

 

 

京都女子大学

らしさを つよさに 未来をひらく

2020年に創基100周年を迎えた京都女子大学は、7学部を擁する女子総合大学。教育の特徴のひとつ、仏教の教えに基づく「心の教育」では、現代社会が見失いがちな心の問題に眼を向け、すべての命を等しく大切にする豊かな心を育んでいます。また、少人数教育を重視し、どの学[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

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