総合的な建築学の構築を目指して
改革の一貫として2024年春、建築学部(仮称)を新設する予定です。現在、建築学部は全国の11大学に設置されていますが、東海地区では初です。
一般的に建築学は、建築物の構造や材料などを研究するという側面から工学の一分野とされています。しかし一方で、建築物やそれを含む景観を豊かなものにするためには、建築史で古今東西の建築物に学んだり、将来の建築のあり方を文化の側面から考えたり、美しさやデザイン性など、芸術的な側面からアプローチする必要もあります。また近年は、生活や都市の環境に加え、防災や災害からの復興なども視野に入れるといった、社会科学からのアプローチも求められます。このような観点から、これまでの工学部建築学科の枠組みを超えた総合的な学問領域として、建築学の拠点を立ち上げたいと考えました。
2021年には、建築を学ぶために様々な工夫を施した「X(クロス)棟」が竣工、共用を開始しました。素材にこだわり、空調設備や配管など、通常では隠してしまう部分もあえて見えるように設計するなど、すべてが建築学のための≪生きた教材≫となるよう設計してあります。また、学生の動線や、実験材料の搬入経路など、教育・研究活動における利便性にも最大限配慮しました。
文系への門戸をさらに拡大
現在の建築学科においても、文系の学生に門戸を開くため文系型の入試を実施しています。新設する学部では、文系の学生がさらに受験しやすいように文系科目だけで受験できるように入試制度を検討しています。
一方で入学後の授業はもちろん、建築士の学科試験においても「数学」や「物理」など理系科目の知識は必要となります。本学では、「数学」、「物理」、「化学」、「英語」の高校までの履修範囲について、教員1名につき、学生4名程度の少人数によるリメディアル教育を実施する『教育開発・学習支援センター』を設置しており、学生のサポート体制は充実しています。
私自身、これまで文系学生を多く指導してきた経験から、文系だから建築を学べないということはないと考えています。新学部においては、門戸をさらに広げ、入学してくる学生にはこれまで以上に力をつけて送り出したいと考えています。
人気の「かおりデザイン専攻」がさらに充実
建築について総合的に考える時、建築物内部の環境、具体的には熱や光、空気なども研究対象とする必要がでてきます。その中で、「かおり」にフォーカスして教育研究しているのが、2008年設置のかおりデザイン専攻です。
「かおり」には、人の体臭やペット臭をはじめ、建築の材料である木や樹脂の匂いも含まれます。人が快適に感じる≪良いかおり≫をどう作るのか、人が不快に感じる≪嫌なにおい≫をいかに消臭していくのか、あるいはホルムアルデヒドなど、新建材から出るアレルギー物質の問題なども扱っています。
定員は25名と小規模ですが、大学の建築教育で「かおり」について体系的に学べる数少ない専攻で、「かおり」の専門家によるユニークな教育・研究の他、企業との共同研究が多いのも特徴です。