AIの登場で知識への価値観が変容
学ぶべきデータサイエンスを再定義
データサイエンスという言葉は社会に浸透しつつあるが、実のところその定義はあいまいだ。さらにChatGPTで注目を浴びるようになった大規模言語モデル(LLM)の発展によりこれまで重視されてきた知識や技能の価値観が大きく変容していると宿久教授は指摘する。
「こうした背景を踏まえ、文化情報学部が目指すデータサイエンス教育とは何かを再定義し、カリキュラムを一新したのが、2024年度から実施する『探究型・総合知創出型教育プログラム』なのです」
新カリキュラムの特徴は大きく2点だ。
第一に、データサイエンス教育の柱を「数理科学」「統計科学」「計算機科学」に定めるとともに、全員が基礎知識を身につけるため「同志社データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)」を必修とした。同学部は文系・理系の出身者が半々で、その興味の対象もさまざまな文化・現象・技術におよぶことから、共通言語となるデータサイエンスの基礎習得を強化したかたちだ。
第二に、必須科目を1~4年次を通して設置し、段階的に探究型の学びを深めていけるようなカリキュラム構成にした。具体的には、1・2年次に「文化情報学1~4」で文化情報学の基礎知識とリサーチリテラシーを習得。3年次春に「ジョイント・リサーチ 」で専門分野の異なる教員によるプロジェクト型のグループワークを実践。3年次秋の研究室配属後は「リサーチ・セミナー 」で研究テーマを決定し、4年次の「リサーチ・プロジェクトI・Ⅱ 」で探究型の学びの集大成として卒業研究を行う流れだ。
こうした必修科目を土台に、専門科目として「文化科学系科目群」「データ科学系科目群」「先端・融合系科目群」と多様な科目を提供し基盤的な知識を深めていく。また文化情報学に関わる基礎教養を習得するための「文化科学系教養科目群」「データ科学系教養科目群」も設置されている。
また同学部では、学生を大学という教育機関のユーザーではなく研究機関の一員としてとらえ、同学部の役割を教員と学生が共同で研究活動を行う「研究機関型教育機関」と位置付けている。学生に、社会から恩恵を受けるTAKERでなく、社会に恩恵をもたらすGIVERとして社会参加を求めている点にも、探究型・総合知創出型の理念が表れているといえるだろう。
「情報」の担い手としてのキャリア形成
~ディベロッパーとハイレベルユーザー~
文化情報学部の学びの先に想定されるキャリアの方向性として大きく2つあるという。
「第一はデータサイエンスの手法を極めたディベロッパーです。大学院を経て研究開発職やITベンダーやメーカーなどでデータサイエンティストになるなど専門職としてのキャリアに進みます。第二がデータサイエンスの知識を自身の職務に活用できるハイレベルユーザーです。物事を俯瞰的にとらえてデータを分析し、応用できる人材には、今やあらゆる企業が注目しています。文化情報学部の学生には、データサイエンスで文化を探究することで総合知の獲得を目指し、人間の時代をけん引する人材になってほしいですね」と宿久教授は高い期待を寄せている。
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