「人間愛」の教育という理念を掲げ、前身となる立正裁縫女学校と立正幼稚園が開設されたのが1927年。1969年に私立大学として初めて教員養成を目的とする教育学部を設置し、これまでに10,000人以上の教員を輩出してきました。小学校・中学校の教員採用実績は全国トップクラスを誇り、2020年には、教育現場の要請に応え、教育学部を学校教育課程と発達教育課程に改組し、少人数制で密度の濃い「人間愛」の教育を実践しています。

今回は、現在教育界が抱える教員不足や教員を取り巻く問題を踏まえ、多くの教員を輩出している同学の取り組みについて教育学部学部長である近藤研至教授にお話を伺いました。

 

私立大学初の教員養成のための教育学部

 本学の教育学部は、私学の中で最も歴史のある教員養成の教育学部です。
教育学部は2020年度に現在の2課程体制を整えました。学校教育課程は9つの専修にわかれています。ここでは小学校の教員に必要な専門性を深められるとともに、それぞれの専修で中学・高校の教員に必要な専門性を深めることもできます。小学校から高校までの全校種の先生を目指すことができる課程になっています。また発達教育課程は子どもの「心とからだ」の発達の連続性と多様性を理解し、乳幼児期から児童期・青年期に至るまで学びをつなぎ、育ちを支える、教育・保育の専門家を育てます。文教大学の教育学部は一生涯における様々な教育について学ぶことが可能となっています。

 本学で教えていると、教育学部に限って言えば、募集状況も学生の意欲をみても、本当に先生になりたい学生が減っているのだろうかと思ってしまうのが実感です。ただ、実際に現場の教師が置かれている環境など、さまざまなニュースや話題が取沙汰されるようになって、おそらく「なんとなく先生でもいいか」ではなく、「本当に先生なりたい」と思っている目的意識の高い学生だけが残るようになり、その多くが本学に来てくれているからなのかもしれないですね。

学生の意欲を育て、一歩先を見据えた教育

 私たちの特徴的な教育プログラムの一つに、2年生で実施する『先生の助手』体験プログラムがあります。
教育実習とは違い、このプログラムでは児童・生徒に教えることはできませんが、自分たちが目指す「先生」という職業がどのような生活なのか、そばで手伝いながら「先生の日常」を一足先に体験できるメリットがあります。

 なぜ、教育実習以外にこのような取り組みをするのかというと、先生の仕事は授業だけではないからです。この経験をもとに、自分はどのような先生になりたいか、生活も含めて先生になったときのイメージを膨らませ、そのために必要な知識やスキルを大学に戻って学び、4年生の教育実習では、その成果とともに子どもたちと向き合うことができます。
以前は、課外活動というかたちで実施していましたが、学生のこうした積極的な取り組みを目に見えるかたちでバックアップするため、昨年度より単位化しました。

 その他にも、多くの学生が学校ボランティア活動に参加しています。これも学生の教職への具体化を助けている活動の一つだと思います。また部活動を含む課外活動への参加率がとても高いというのも教育学部の学生の特徴でもあります。毎日、大学で生活する。最近には珍しくなった、まるで高校のようなキャンパスライフを送る学生も多いです。学生はこうした活動を通して、新たな人間関係を育み、仲間とともに社会とのつながりを広げています。これもまた「先生」を目指す学生にとっては貴重な経験です。教員免許を取得するには、免許法に則って取得すべき単位も多いので、勉強だけでも学生はとても忙しいと思います。それでも様々な体験を学生時代に経験しようとする意欲的な学生が多いのが本学の特徴ともいえます。

学生に寄り添い、見守り育てる伝統

 本学では各専修ごとに担任を配し、担任する教員は、学生一人一人に目を配り寄り添いながらその成長を見守ります。こうした日常以外にも、学生を見守る風土があります。一つは父母会です。保護者と大学とで連携して、学生の育てを支えています。もう一つは卒業生の力です。教育現場に行くと、「後輩」たちに、時には厳しく、時には優しく、接触してくれます。実習生、ならびに新米教員も、とても心強く思うようです。もちろん、大学はこうした卒業生のケアもしています。信じられないことでしょうが、「暇だったから」という理由で、卒業後に大学を訪れる学生の数はとても多いです。こうした風土の上で、「文教大学教育フォーラム」を毎年開催しています。これは、教育現場にある重要なテーマを介しての交流の場です。大学はこうした場を準備して、卒業生と在学生の交わりを積極的に支援しています。どちらにとっても、こうした場に参加することによって自身の足元を確認でき、いろいろな不安を霧消させるものになっているようです。

 「国家百年の計は教育にあり」という言葉がありますが、国家にとって人材育成は100年かけてなすべき重要なこととされてきたように、人を育てるということはすぐに役に立つことばかりではなく、すぐに結果が出ることでもありません。私たちがあくせくと学生を育てれば、いずれ学生が子どもたちを教えるようになったとき、同じように学生は子どもたちに教えるでしょう。だからこそ、教師を生業とするのであるならば、自分自身も4年間かけてゆっくりと力をつけたり、考え方を醸成したり、自分の今後のあり方について考えていくことが大切だと学生には伝えています。また、そうできる環境をつくることが私たちの使命でもあります。大学は学生の夢の実現を、どういう形で支えるのかを常に意識しています。

 「先生になる」ということは、教員採用試験がゴールではありません。
私たちが教えているのは、教員採用試験に合格することだけではなく、合格した後に「先生」として歩み続けていくための学びなのです。先生になった後をイメージしながら4年間を過ごすことで、現実を的確に捉え、子どもと向き合い、問題を解決していくために学び続ける姿勢、そして先生としてやっていく覚悟も養われます。
おそらく、みなさんの身近なところにも本学の卒業生がいると思います。全国各地で多くの卒業生が活躍している、それが本学が取り組んできた教育の何よりの証だと思っています。

文教大学教育学部 学部長

近藤 研至先生

文教大学教育学部 学部長。文教大学教育学部を卒業後、上越教育大学大学院学校教育研究科と筑波大学大学院教育研究科を修了。
専門分野:言語学、日本語学

 

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大学ジャーナルオンライン編集部

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