2024年度大学入学共通テストの確定志願者数が発表されました。18歳人口の減少もあり、当然ながら前年比96%と減少しています。公表資料では、受験地(都道府県)別の志願者数や出身地(都道府県)別の志願者数などが掲載されており、高校等新規卒業見込者(現役生)・高校卒業者等(既卒生)別、男女別の志願者数が確認できます。このうち出身地別の志願者数を男女別に見ると、大都市部の女子数は男子に比べて減少が緩やかであることが分かります。
確定志願者数は現役・既卒ともに減少
大学入試センターは、12月5日に2024年度大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の確定志願者数を発表しました。それによると前年比96%と約2万人の減少となっています。大学入試の倍率緩和と易化傾向により、既卒生が減少していますが、共通テストの確定志願者数では現役生も減少しています。ただ、高校卒業見込みの生徒で共通テストに出願した者の割合(現役生志願率)は、過去最高の45.2%でした。共通テストになり、出題傾向がこれまでの大学入試センター試験とは異なることから、私大専願者の共通テスト離れが指摘されていましたが、現役生の志願率は伸びていました。このあたりの詳しい分析や過去データとの比較は、河合塾の教育関係者のための情報サイトKei-Net Plusに詳しい記事がありますので、そちらをご覧ください(下記にリンク有)。
さて、この志願者数の推移を遡って、大学入試センター試験(以下、センター試験)からの志願者数推移を男女別にみたグラフが<グラフ1>です。現在、大学入試センターのHPでは、2014年度データまで遡れますが、このグラフは筆者が個人的に記録していたそれ以前の全体志願者数(男女別)のデータを加えて作成したグラフです。
このグラフを見ると女子の志願者数が共通一次試験からセンター試験に変わった1990年以降、急速に増えていることが分かります。さすがにここ3~4年は減少傾向にありますが、90年代と比べると男女差が大幅に縮小しています。河合塾の大学入試情報サイトKei-Net「2024年度入試の概要」の記事によると、学部系統別の志望動向では女子のキャリア志向の変化が顕著に現れており、法学系、理工学系など従来は女子占有率の非常に低い分野に女子が進出しているのが特徴的だと解説しています。グラフのように大学志願者数の上での男女差が無くなるということは、今更ながらですが、受験生の学部系統を選択する志向にも変化が見られるということだと理解できます。企業経営の観点から見れば大学側が変化に合わせて対応すれば済むこと、となるのですが、大学は環境の変化に合わせて、新しい学部学科を設置することはできても、既存の学部学科を改廃することは非常に難易度が高く、経営上よほど追い込まれない限りはできないのが実状です(今がまさにその時なのかも知れませんが)。
河合塾の教育関係者のための情報サイトKei-Net Plus
https://www.keinet.ne.jp/teacher/
大学入試センター「過去のセンター試験情報」
https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/kako_shiken_jouhou/kako_centershiken_jouhou/
河合塾の大学入試情報サイトKei-Net「2024年度入試の概要」
https://www.keinet.ne.jp/exam/future/
大都市のある都府県は減少数が緩やか
出身地別(出身高校等の所在地別)の男女別志願者数について、前述の大学入試センターの資料で、遡ることが可能な2014年から、最新の2024年度までをグラフ化したものが<グラフ2>です。このグラフ2は東京都、神奈川県、大阪府、愛知県と人口が多い大都市がある都府県です。さすがに人口が多い大都市があっても、志願者数が減少傾向にあることに変わりはありませんが、グラフの傾きは緩やかになっています。
ただ、グラフ2を見ると、高校生数では神奈川県や愛知県を上回る大阪府の共通テスト男子志願者数が2021年頃から減少し始めており、共通テストの志願者数だけで見ると、神奈川県や愛知県を下回っています。前節で私大専願者の共通テスト離れについて触れましたが、大阪府ではより顕著に傾向が現れているのかどうか、このデータからだけでは分かりません。
前述の河合塾「2024年度入試の概要」記事では、難関大グループでは、共通テスト利用方式で志望者の増加率が高くなっており、国公立大志望者が併願のための入試方式として、共通テスト利用方式を検討している可能性について言及しています。恐らく難関大グループではそうなるでしょう。しかし、それに続く近畿エリアの中堅私大の共通テスト利用方式は、この数字を見る限り、かなり志願者数が減少して受験生にとってはポジティブな傾向となる可能性が示唆されます。
また、女子志願者数の推移を見ると、神奈川県、愛知県、大阪府ともに男子志願者数よりもグラフの傾きが緩やかで、減少傾向が緩やかです。国立大学の理工系学部で女子受験生を対象とした募集区分、いわゆる女子枠が拡大していますが、施策としては女子受験生の推移と連動しており理に適っていると言えます。なお、現役志願率は、愛知県が53.7%と高く大学進学希望者=共通テスト志願者のような状況ですが、東京都58.0%、広島県56.0%とさらに高いところもあります(大阪府36.8%、京都府36.5%)。
大都市部に近接した地域の志願者数の状況
前節の大都市のある都府県に近接した県の状況をグラフにしたものが<グラフ3>です。グラフ3は、埼玉県、千葉県、静岡県、兵庫県、茨城県の志願者数推移ですが、埼玉県、千葉県、兵庫県では2020年頃から男子志願者数が大きく減少しています。それに比べて、埼玉県、千葉県、兵庫県の女子志願者数はそれほど減少していません。市場性という観点で見ると興味深い結果です。同様に茨城県の女子志願者数もほとんど変化がないように見えます。
このほかで大都市のある、北海道、広島県、福岡県の志願者数推移をグラフにしたものが<グラフ4>です。グラフ4を見ると、北海道、広島県、福岡県は男女ともにグラフの傾きが大きく、これらの地区では、大学の学生募集が厳しくなりつつあることが推察されます。なお、今回は共通テスト志願者数が1万人以上の都道府県を対象にグラフ化しましたので、大都市を有する京都府(9,172人)宮城県(7,743人)が入っていません。
この資料で共通テストの現役志願率を県別に比較するだけでも、地域特性などをある程度見ることができ、様々な点で興味深いデータ集になっています(以下リンク)。
大学入学共通テスト 令和6年度試験「志願者数等」
https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/r6/