2025年4月、昭和女子大学の国際学部は、3学科の新たな国際学部として生まれ変わる※。海外留学に軸足を置いた学びで、多様な領域をカバーする教養と論理的思考、国際社会で通用する語学力とコミュニケーション力、そして異文化への理解を深め、今の、そしてこれからの世界で活躍できるスキルを有する人材育成を目指す。
※【計画中】本計画は予定であり、内容が変更となる場合があります

2学科体制から3学科に再編成し多様な学生のニーズに応える

 今回、国際学部は、国際教養学科、国際日本学科、国際学科の3つに再編される。
現行の英語コミュニケーション学科は、国際教養学科へ名称変更となる。国際教養学科では、米国式のリベラルアーツ教育で幅広い知識と論理的・批判的思考力を養い、「英語圏社会」「表象文化」「言語・教育」といった専門領域で知見を深め、発信できる力を高めていく。コミュニケーションを学ぶクラスは10人以下の少人数制で、教員も学生同士もインターアクションな学びを展開する。

 新たに設置される国際日本学科は、日本の現代カルチャーをもっと世界に広めるために、ジャパンスタディーズや、異文化理解、観光・地域創生分野を国際的な視点から学び、異なる文化圏に対して「日本を発信する力」を身につける。

 特に海外交流史など、諸外国と日本の関係、そして日本の対外関係を通史的に学ぶことで世界へ日本を発信する国際人としての見識も備わった人材育成に力を入れていく。「観光」「地域創生」分野では実務家専任教員を配置し、専門的指導を充実させる。さらに国内外のインターンシップで学んだことをさらに深化させ、学生は将来のキャリアへつなげていくことができる。海外のインターン先には、現在、英語圏の東南アジアやカナダなどを予定している。

 国際学科では、英語+1言語を必修として、複言語教育で言語と世界を広く学ぶ。言語の運用能力の他、コミュニケーション能力、国際社会・地域社会の問題解決や多文化共生に向けた論理的・批判的・複眼的思考を深める。また、国際学科の特色でもある「ダブル・ディグリー・プログラム」で、昭和女子大学と協定大学との2つの学位取得が可能だ。

独自の留学システムを進化させる

 昭和女子大学の留学システムを支える海外キャンパスの「昭和ボストン」は、1988年、昭和女子大学がアメリカの東海岸の学園都市ボストン郊外に日本の大学として初めて海外に設置したキャンパスだ。

 授業はすべて現地の教員が担当し、少人数クラスで徹底した指導を行う。24時間体制のセキュリティーを備えた全寮制キャンパスには日本人看護師や職員もいるので安心・安全の環境で留学ができる。

 また、キャンパス外でのボランティア活動や、歴史や文学の名所へのフィールドトリップを行ってアメリカの文化に触れる機会なども多く用意されている。

 「本学では、昭和ボストンの後に協定校に留学する学生も多く、昭和ボストンを経験していることで現地生活への適応も早く学びに集中できるとの声が聞かれます。また協定校へ留学中も同じアメリカですと、昭和ボストンの先生にメールでいろいろなことを相談できたりするので安心感もあるようです」と国際学部学部長の川畑由美教授は話す。

 昭和女子大学では、今回の改組にあたり、昭和ボストンでのカリキュラムを大幅に改革した。日本で学ぶ専門科目を昭和ボストンでも展開する。学生は、語学の修得だけでなく、異文化の中で、さまざまなテーマについて学ぶことができる。

 留学プログラムの内容は、学科の学びにあわせて異なる。

 国際教養学科は、2年生の前期に、テンプル大学ジャパンキャンパス(以下、TUJ)のアカデミック・イングリッシュ・プログラムに参加して国内留学、後期に昭和ボストンに留学して学ぶ。3年次になると、認定留学で協定校に半年から1年間、アメリカやヨーロッパ、アジア、オセアニア地域での留学も可能。4年間の在学中に、最大2年間留学することができる。

 国際日本学科も、2年生の前期に昭和ボストンに留学し、現地でツーリズムや地域創生論などを英語で学ぶ。昭和ボストンは開学以来、ボストンの大学や現地コミュニティと交流を図ってきた。今後はボストンという学術的な環境の中で、学生たちがより積極的に学びながら関わることができるように現地の地域活性プロジェクトなどの構想も広がっている。

 既存の国際学科では、韓国語、中国語、スペイン語、ベトナム語を学んだ学生は2年次から3年次に各国の協定校へ留学している。フランス語、ドイツ語を学んだ学生はボストンと組み合わせて2ヶ国留学する学生も多い。特にお隣である韓国については留学を希望する学生も多く、留学前に現地韓国の先生とのオンライン授業や韓国の先生が日本に来日されて行われるオフライン授業もあり、大学間の交流も深まっている。

 また、2014年度から国家重点大学である上海交通大学との間で開始したダブル・ディグリー・プログラムは、2024年3月時点で90名を超える学生が昭和女子大学と協定大学2つの学位を取得して修了している。国際教養学科と国際日本学科では、テンプル大学ジャパンキャンパス(米国)、クイーンズランド大学(オーストラリア)に、国際学科はこれら2大学に加えて、上海交通大学(中国)、ソウル女子大学校・淑明女子大学校(韓国)の5大学でのダブル・ディグリー取得が可能となっている。

留学をあきらめないための支援

 世界経済における日本経済の影響力が弱まり、円安の影響が教育にも及ぶなか、留学をあきらめてしまう学生も少なくない。昭和女子大学では、隣接するTUJで日本にいながら海外の大学で学ぶことができ、授業料は昭和女子大学への学納金が充当される。また、同大の海外キャンパス「昭和ボストン」への留学では、昭和女子大学への学納金以外は渡航費・滞在費の負担のみで参加できる。これらの他にも、独自の奨学金制度があり、海外の大学で学びたいという学生の意欲を様々なかたちで後押しする。

 インターネットが影響力を増し、どれだけオンラインでつながれるようになったとしても、実際に経験し感じることの価値は計り知れない。昭和女子大学が取り組むこうした留学への支援を活かして、多くの学生が海外留学を実現し、そこで得た経験や知識を背景に、世界の中で活躍することが期待される。

昭和女子大学 国際学部学部長

川畑由美(かわはた・ゆみ)

昭和女子大学国際学部学部長。女性文化研究所所員。博士(教育)。2011年、昭和女子大学人間文化学部国際学科教授に着任。17年、昭和女子大学国際学部国際学科教授。専門は近代米文学。著書に『日中韓プログラムにおけるグローバル・リーダーシップ育成のあり方』(共著:お茶の水書房)、『文学・労働・アメリカ』 (共著:南雲堂フェニックス)、『ウィリアム・スタイロンの世界』 (共著:中央大学出版部)などがある。

 

大学ジャーナルオンライン編集部

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