「自由を生き抜く実践知」をブランディング・ワードとして、自由な発想と自律的な判断のできる学生の育成を目標に掲げる法政大学。「キャリアとは自分らしい生き方である」という考えのもと、入学時から全学生を対象に“誰一人も取りこぼさない”きめ細やかなキャリア形成・就職支援の在り方を摸索し続けている。その支援は、キャリアセンター内にとどまらず、企業・同大キャリアデザイン学部との連携、学生組織の有機的活用、また必要とあれば外部サービスとの協業など、多様化する学生に向け様々な選択肢を提供している。『キャリアに強い法政大学』の旗印となるキャリアセンターの藤野吉成部長に聞いた。
キャリアの礎は日常の学びのなかに。
学生の自律性を育むキャリア形成・教育プログラムを構築
「本学では、大学生活をキャリア形成の重要な礎と捉え、“キャリア形成の重要なファクターは正課教育のなかに含まれる”“学部教育との連動のなかにキャリア教育がある”という姿勢でキャリア教育を展開しています。言い方をかえると、大学での学習と将来の社会人生活との連動を重視してキャリア形成支援を行っているのです」と藤野氏。
文系全学部のカリキュラムには、1年次から「キャリアデザイン授業」が組み込まれている。「キャリアデザイン入門」では、キャリアデザインとは何か、大学での過ごし方などについて学ぶ。「キャリアデザイン応用」では、ワークスタイルとライフスタイルに焦点を当て、将来につなげていく。キャリアセンター職員も講師となり、大学の就職サポート体制やインターンシップなど、早い段階での情報提供を行っている。
「キャリア構築を学問として研究している『キャリアデザイン学部』があることも、本学の強みです。学部と連携して授業成果を分析し、キャリアデザイン授業の質を高めています」
また、ピア・サポートコミュニティ(PSC)という学生同士の支援体制が充実しており、支援する側・される側がともに成長する機会となっている。なかでも、支援する側としてプロジェクトに参加することは、学内インターンシップ的なものと考えることもできる。
例えば、同大のオープンキャンパスは、20年以上前から学生主体で開催している。現在は、キャンパスごとに数百人規模の実行委員会組織として、大学事務局や教職員と協働し、企画から運営までを取りしきっている。キャリアセンター学生サポーターは、就職活動を終えた4年生がオリジナル企画や個別相談を通じ、後輩を支援する活動だ。ほかにも、課外教養プログラムや授業アシスタント、ボランティアセンターなど多彩だ。
「PSCでは、仲間とともに試行錯誤し、問題解決に取り組み、実践してくという過程を通じて、チームワークや考える力などの社会人基礎力を身につけることを期待しています」
学生ファーストを徹底し、就職希望者決定率98・6 %の実績。
キャリアセンター支援のほか、学内就活エージェントも常設
就職支援でも、“誰ひとりも取りこぼさない”という姿勢が貫かれている。志向別のイベントの実施をはじめ、アドバイザーによる個別相談など多彩なプログラムを揃え、2024年3月時点の就職希望者決定率は98・6 %と高い実績を誇る。
「キャリアセンターで心掛けているのは常に学生ファーストです。例えば、毎年6月ごろからは就職未内定の学生全員にコンタクトを取り、一人ひとりに寄り添った支援に注力しています」。3キャンパス15学部、約3万人の学生を擁する大規模大学ながら、就職戦線を”ひとりで戦わせない支援”を行き届かせるため、きめ細かなフォローを徹底しているのだ。
さらに2023年10月には、全国に先駆け、キャンパス内に「HU就活エージェント(※)」を常設し注目を集めた。就職活動が多様化するなか、キャリアセンターとは別組織として学生を支援する。
「学生の中には一定数、民間の就活サービスも利用しているという実態がありました。であれば、学生のニーズに応えて、法大生にとって安心して使いやすいエージェントが身近にあれば、支援を受けやすいだろうという発想に至ったのです」
中小規模の優良企業情報などは、エージェントに強みがある。学生にとっては、企業選びの幅が広がることにもなる。多様化する学生のキャリア観、就職活動時期の個別化にも寄り添ったキャリア支援に向けて、一層の強化を図っていく。
※株式会社エイチ・ユー(法政大学100%出資)と就職支援事業を展開する株式会社ジェイックとの業務提携によりサービスを開始
「大学生活を通じて、授業・就職講座・個別相談など、
キャリアについてサポートを受けられる体制が整っています」
大学の支援を、学生は実際どのように活用したのだろうか。経営学部市場経営学科 4年の有路望来さんに話を伺った。
Q「キャリア教育科目は履修しましたか?」
A「1年生の時に、『キャリアデザイン入門・応用』を履修しましたが、早い段階から社会で働くとはどういうことなのかを学ぶことができました」
Q「キャリアセンターを利用するきっかけは?」
A「2年生の秋学期に、就職活動に関する各種講座の案内があり、希望の講座に申し込みました。「自己分析」や「企業研究」など、低学年から受講できる講座も多いので、段階的に理解を深めていけるのがよい点だと思います。「インターンシップサポート講座」では、業界・企業研究だけでなく、社会人としての意識や考え方、ビジネスマナーも経験できました」
Q「個別相談や模擬面接は利用しましたか?」
A「3年生になり、本格的に就職活動を始めるため、キャリアアドバイザーとの個別相談を活用しました。まず何から始めればよいのか、どんなスケジュールで活動すればよいかなど、親身になって接してくれましたね。エントリーシートの添削や模擬面接など、実践に活かせる的確なアドバイスもいただくことができました。その結果、希望していた金融業界に内定することができました。常に寄り添ってくれ、とても心強かったです。キャリアセンターは、授業の空き時間にも気軽立ち寄ることができるので心強いです」
法政大学
※2024年5月時点
キャリアセンター部長
エイチ・ユー代表取締役社長
藤野 吉成氏