18歳人口が年々減少している日本では、「高等教育の国際化」の重要性が叫ばれており、大学における留学生の受け入れ強化や教育の国際化の推進が課題となっている。一方、留学の受け入れが盛んなアメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアでは、潤沢な予算を計上して留学生リクルーティングを行っており、日本は一歩遅れを取った形となっている。
今後より一層、日本の大学も積極的に留学生獲得のための施策を打ち出していくことが必至となる背景の中、2024年9月5日、WOVN Studio Tokyo(東京都港区南青山)で、「GLOBALIZED by WOVN.io 大学国際化 〜留学生の獲得を後押しする広報、Web・DX戦略〜」が開催された。主催は、Web サイト多言語化ソリューション『WOVN.io(ウォーブン・ドットアイオー)』を提供する Wovn Technologies株式会社。本イベントでは、国内外の留学生リクルーティング事情に詳しい関西国際大学の芦沢真五氏や一橋大学の太田浩氏が登壇。併せて、立命館アジア太平洋大学と早稲田大学の取り組み事例が発表された。
昨年を上回る500名が参加した「留学生向け広報戦略の最前線イベント」の詳細を、登壇者ごとにレポートしていきます。
留学生リクルーティング戦略とデジタル活用の可能性――芦沢真五氏(関西国際大学)
外国人留学生から選ばれるためには、受け入れ環境の整備に加え、ブランドの確立や海外でのプレゼンス向上、効果的な広報活動が不可欠であり、大学の魅力や最新ニュースを確実に届けていくことが求められる状況で、大学はどのような切り口で広報戦略を打ち出していくべきなのか。最初に登壇した芦沢真五氏(関西国際大学)は、基調講演「留学生リクルーティング戦略とデジタル活用の可能性」で、留学生のリクルーティングにおいて重要となるデジタル活用について講演した。
芦沢氏はまず、過去10年における留学生の推移を示し、ベトナムからの留学生が半減し、ネパールからの留学生が倍増しているなど、近年の動向について分析した。日本への留学生はアジア出身者が多く、大学は留学生の母国である現地情報を収集したうえで、国別にリクルート戦略を立案することが大切であると言及。また、現地とのコミュニケーションやネットワーキングの活性化を図ることも重要である。現地の日本語学校やエージェントと連携するとともに、志願者への直接的なマーケティング活動も有効である、とした。
情報発信に関しては、日本留学の「優位性」について的確に伝えることが大事であり、安心・安全で生活がしやすく、就職、大学院進学などの選択肢もあることをアピールする必要がある、と強調した。
次に、芦沢氏は、出願後、48~72時間で合否通知をするカーティン大学(オーストラリア)の事例を紹介した。「63%の受験者が、最初に合格通知をもらった大学に入学している」というデータに基づき、オーストラリアでは短期間で合否通知を出すことがスタンダードになっている。加えて、留学生のリクルーティングにデジタルマーケティングを日常的に活用しており、リアルタイムでいつ、どの国から何名の受験生が出願手続きをすすめ、どのフェーズにいるか瞬時に把握できているという。
このように、海外の大学は受験生の立場に寄り添ってリクルーティング戦略を打ち出している一方、日本の大学は大学側の都合を優先して入学選抜のスケジュールを立てている。また、デジタル化も遅れを取っている。プロダクトアウトからマーケットインに発想を転換させることが、日本の大学の留学生リクルーティングを成功させるための「最初の一歩」になることを示唆した。
登壇者
関西国際大学
副学長 国際コミュニケーション学部 教授
芦沢 真五
多言語DXで叶える、留学生への直接アプローチ――宇田川雅俊氏(Wovn Technologies)
Wovn Technologiesの宇田川雅俊氏が、「大学のWebサイトの多言語化」をテーマに登壇した。日本の18歳人口は減少の一途をたどっており、新たなマーケットとして留学生市場に着目する大学が増えている。世界の留学生数は2000~2020年までの20年間で3.5倍に増加しているが、日本のシェアはわずか4%であり、さらなる開拓の余地があると紹介した。そして、外国人留学生が日本に留学する際、「日本語学習」と「情報収集」に苦労したというデータがあり、「多言語コミュニケーション」が留学生獲得の鍵を握ると説明した。
しかし、翻訳人材リソースの不足やノウハウの欠如、人力翻訳が高コストであるなど、多言語化には多数の課題がある。そこで、宇田川氏はSaaSの活用を提案し、Wovn Technologiesが提供するWeb サイト多言語化ソリューション『WOVN.io(ウォーブン・ドットアイオー)』を紹介した。『WOVN.io』の導入により、最大45言語まで多言語対応が可能になるとのこと。1,000ページを超えるサイトの英語化を3か月で実現した大学の事例を紹介しながら、「18歳人口の減少が加速する2030年までの5年間に、多言語化に取り組むことが重要」だと提唱した。
登壇者
Wovn Technologies株式会社
Field Sales
宇田川 雅俊
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