東海大学の志医学部基礎医学系今西規教授中心とする研究グループは7月20日、細菌感染症の診断に応用可能な、迅速なゲノム解析システムの開発に成功したと発表した。ポータブルシーケンサとラップトップ型パソコン2台で解析でき、ゲノム配列データベースに登録されている8万以上の細菌種・系統を2時間以内に特定できることから、災害現場や熱帯地域などでの活躍が期待される。

 肺炎や食中毒などの細菌感染症は世界的に大きな問題である。原因となる細菌には多くの種類があり、細菌感染症の診断は細菌培養法によって行われている。しかし、判定に1~2日かかるほか、難培養性細菌の存在や培養条件の不適合によって菌種の同定は困難である。そのため、これまで患者には経験によって抗菌薬を投与する場合が多かった。これが有効な薬剤投与の遅れや薬剤耐性菌出現の促進をもたらしていると考えられている。

 今回、研究グループは、ポータブル型のDNAシーケンサMinIONとラップトップ型PC2台で構成されるゲノム解析システムを作成した。これを用いて複数の最近の混合DNAの調べ、正確さ、時間を検証した。その結果、2時間以内に、DNA配列の読み取りとそこに含まれる主な細菌の同定を行えることがわかった。実際に膿胸患者の胸水検体を同システムで解析したところ、原因と考えられる嫌気性菌を迅速に検出することができた。ただし、細菌の組成については、計算時間が大幅にかかるため、さらに改良の余地があることがわかった。

このシステムをさらに発展させれば、適切な抗菌薬の選択や薬剤耐性菌の出現の抑制につながるものとしている。

論文情報:【Scientific Reports】A portable system for rapid bacterial composition analysis using a nanopore-based sequencer and laptop computer

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