現在、新型コロナウイルス検査の主流となっているPCR検査は、検査のスピードと精度に課題があり、臨床現場即時診断や大規模なスクリーニング検査における大きなハードルとなっている。こうした中、大阪大学のグループが、1個のウイルスを高速・高精度に識別する「AIナノポア技術」の開発により、5分間の唾液計測で新型コロナウイルスを感度・特異度90%以上で診断できる検査法の確立に成功した。

 本検査法は、電解質で満たされた貫通孔であるナノポアとAI技術とを組み合わせた、いわばナノテクノロジーとAIの革新的融合技術を用いている。ナノポアを流れるイオン電流を計測し、AIによって電流波形を機械学習することで、1個のウイルス性状を電気的に読み取り、高速・高精度に識別する。

 このAIナノポア技術は、培養されたSARS、MERS、SARS-2、229Eコロナウイルスを高精度に識別することができ、唾液検体を5分間計測するだけで、陽性・陰性を感度90%・特異度96%で検査できることが実証済み。2021年春のセンバツ高校野球において、本検査法を用いた大規模フィールドテストが実施された際には、PCR検査との一致率100%を達成した。

 また、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスA型の高精度な識別にも成功しているといい、異なるウイルスをAI学習することで新規の病原体検出法も迅速に構築することが可能だとしている。本検査法は、早さと精度の両方を満たす新型コロナウイルス検査法として即時診断、スクリーニング検査への応用が期待されるとともに、AIナノポア技術が今後起こりうる新興感染症への対応においても大いに有用であることを示している。

論文情報:【Nature Communications】Combining machine learning and nanopore construction creates an artificial intelligence nanopore for coronavirus detection

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