東北大学、東北学院大学、量子科学技術研究開発機構らのグループは、ヒ素を体内に蓄積することのできる植物「モエジマシダ」におけるヒ素の吸収・輸送の様子を初めて生きた状態のままで可視化することに成功した。
モエジマシダは有害元素であるヒ素を最大2%の濃度まで蓄積しても正常に生育する能力を持ち、ヒ素で汚染された土壌や排水を植物で浄化する「ファイトレメディエーション」への応用が期待されている。しかしこれまで、モエジマシダが体内にヒ素を取り込む過程についてはよくわかっていなかった。
本研究では、生体内で天然に存在するヒ素と同じ挙動をするヒ素の放射性同位元素であるポジトロン放出核種ヒ素-74(As-74)と、植物RIイメージング技術を用いることによって、モエジマシダが生きたままの状態で、ヒ素を根から吸収し体内に輸送していく様子を連続的な動画像として撮像することに初めて成功した。
また、これまで不明だった、モエジマシダの根茎(種子植物や裸子植物の茎に相当するシダ植物の部位)の役割も明らかとなった。低濃度のヒ素を投与した場合では、根から吸収されたヒ素は、一部が根茎に蓄積されながら、葉に輸送されていた一方、ヒ素の高曝露下では、成熟した葉へとヒ素が積極的に輸送されていた。すなわち、根茎には、ヒ素の一時的な蓄積と、若い葉を保護するためにヒ素の転流を調節する役割があることが示唆された。
ヒ素高蓄積植物であるモエジマシダ体内のヒ素の動きを捉え、ヒ素体内輸送過程での根茎が果たす役割を明らかにした本研究がもたらす知見は、ファイトレメディエーションの推進にも貢献すると期待される。