山梨大学の横道洋司准教授らの研究チームは、子どもの生まれた月とアトピー性皮膚炎発症率との関係を調べた結果、秋から冬、特に10~12月生まれの子どものアトピー性皮膚炎発症率が最も高く、4~6月生まれの子どもの発症率は低いことが分かった。

 子どものアトピー性皮膚炎のリスクファクター(発症確率を高める要素)は、遺伝要因では両親のアレルギー性疾患、環境要因では気象条件・かゆみを引き起こすもの・皮膚に広がる細菌の種類・心理的ストレス・生まれた月がある。日本では秋生まれの発症率が高いとされるがデータは少ない。また気象条件との関連を調べた研究はほとんどない。

 研究チームは今回、約10万人の子どもを対象とした「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータを使い、生まれ月別に生後半年から3歳までのアトピー性皮膚炎発症率を測定。その結果、10~12月生まれの子どもに発症率が最も高く、最も低い4~6月生まれの子どもの発症率の1.2倍だった。また生後半年までのアトピー性皮膚炎発症の多寡は3歳まで継続していた。

 また、母親にアレルギー性疾患の既往がある場合、子どものアトピー性皮膚炎の発症率は1.69倍になり、1.18倍であった父親の既往よりも影響が大きかった。さらに、気象庁のデータから、生後6ヶ月間の出生地の日照時間・湿度とアトピー性皮膚炎発症率との関係を分析したが科学的関連は認めなかった。

 海外で秋から冬に生まれた子どものアトピー性皮膚炎発症率が高いことは報告されていた。今回の大規模データ調査によって日本でも科学的に確認されたことになる。アトピー性皮膚炎発症に関与する環境因子については、今後も研究が必要としている。

論文情報:【BMJ Open】Association of the incidence of atopic dermatitis until 3 years old with birthmonth and with sunshine duration and humidity in the first 6 months of life: Japan Environment and Children’s Study

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