自治医科大学小児科の山形崇倫教授、中央大学人間総合理工学科の檀一平太教授らの共同研究グループは、光を用いた脳機能イメージング法を利用して注意欠如・多動症(ADHD)の症状を個人レベルで可視化することに成功しました。

ADHDの特徴的な症状は落ち着きがない・待てないなどです。子供らしさとも混同されやすく気づきの遅れにつながります。これが学習の遅れや引きこもりなどさらなる問題へとつながる可能性を高めてしまいます。

現在のADHDの検査方法にはチェック項目に答える形式の主観的な物、患者の35%に見られる脳波の異常を検出するものなどがありますが、いずれも特定が難しく見逃してしまうケースが少なくありません。そのためADHDを判別するための客観的で感度が高い方法の開発が求められていました。

 今回の実験では6歳から14歳までのADHD児30名、定型発達児30名にADHDの症状を計るのに適した行動抑制ゲームをさせました。この6分間のゲームの最中に脳活動変化を光トポグラフィ※という方法によって計測しました。光トポグラフィは頭の上から近赤外線を当てることで、体を傷つけることなく脳機能を測定する方法です。この結果、行動抑制に関与すると考えられている右前頭前野で脳活動に違いがみられました。定型発達児ではこの部位の活動上昇がみられたのに対し、ADHD児には見られませんでした。この違いからADHD児の80%以上を判別できることを確認しました。

 今後はこの計測システムを使いやすく改良するとともに、大規模な臨床試験を通して実際の診断で使用できるかどうかを判断していきます。
※光トポグラフィは日立製作所の登録商標です。

出典:【自治医科大学】光トポを用いたADHDの客観的診断法の基礎を確立多施設の大規模による検証へ

自治医科大学

大学ジャーナルオンライン編集部

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