日本学士院は、優れた研究成果を上げ、今後の活躍が期待できる東京大学大学院経済学研究科の川口大司教授(45)=労働経済学=ら6人に学術奨励賞を贈ることを決めた。授賞式は2月8日、東京都台東区の日本学士院で開かれ、賞状や研究奨励金110万円が授与される。
日本学士院によると、受賞者は川口教授のほか、理化学研究所の杉山将革新知能統合研究センター長(42)=機械学習▽北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの野町素己准教授(40)=スラブ語学▽理化学研究所の茂呂和世統合生命医科学研究センターチームリーダー(40)=免疫学▽京都大学iPS細胞研究所の山田泰広教授(44)=腫瘍病理学▽東京大学大学院理学系研究科の吉田直紀教授(43)=宇宙論。
川口教授は大規模マイクロデータに標準的な労働経済学理論と計量経済学手法を適用し、日本で学歴、企業規模、性別にみた同一属性グループ内の賃金格差が拡大していることを突き止めた。杉山センター長は時間的変化に対して有効に働く人工知能の適応学習理論を打ち立て、顔画像からの年齢推定やロボット運動制御に成果を上げた。
野町准教授は消滅危機言語の西スラブ語群のカシュブ語、南スラブ語群のバナト・ブルガリア語について東欧でフィールドワークし、貴重な資料を収集した。茂呂チームリーダーは脂肪組織内にリンパ組織が存在することに気づき、ナチュラルヘルパー細胞と命名した。
山田教授は体細胞初期化技術をがん研究に応用、マウスの生体内で不完全な細胞初期化が小児固形がんに似たがんを発生させることを見つけた。吉田教授は物理法則を基にビッグバン後の宇宙で多数の恒星と星間ガスが生まれる過程を詳しく計算するコンピュータープログラムを開発した。