日本でも15~20万人の患者がいるとされるパーキンソン病では、数々の症状を改善するための対症療法は存在するものの、疾患そのものの進行を抑制するような根本的な治療法が確立されていない。
他方で、近年、運動によるパーキンソン病の進行抑制効果に注目が集まっているという。しかし、日常的身体活動や運動習慣が半年程度の短期的な症状改善には有効との報告はあっても、数年以上にわたる長期的効果については明らかではなかった。
今回、京都大学の研究者らは、現在までに1400人以上の縦断的なデータを収集している国際多施設共同観察研究であるPPMI(Parkinson’s Progression Markers Initiative)研究から237名のパーキンソン病患者のデータを用いて、日常的身体活動量と運動習慣の維持が長期的(5~6年程度)にどのような効果を持つのかを探索した。
その結果、パーキンソン病において日常的身体活動量や運動習慣の維持が長期にわたって症状の経過の改善と関連する可能性が示されたという。1~2時間程度の中等度以上の運動習慣を週に1~2回程度継続することは、主に歩行・姿勢の安定性低下の進行抑制と有意な関連を認め、1日に2~3時間程度の労働に関連した活動を継続することは、主に処理速度低下の進行抑制と有意な関連を認め、家事に関連した活動を継続して行うことは、主に日常生活動作能力低下の進行抑制と有意な関連を認めたとしている。
本研究成果は、運動介入によるパーキンソン病の進行を抑制する方法論の確立の第一歩になると考えられる。また、活動の種類により異なる効果をもたらす可能性も示されたことから、個々のパーキンソン病患者の症状に合わせた運動介入の重要性も示唆しているだろう。