順天堂大学大学院医学研究科眼科学の猪俣武範准教授らの研究グループは、iPhoneアプリ「アレルサーチ®︎」によるクラウド型大規模臨床研究を実施した結果、スマホアプリから収集した個々人の花粉症患者の特徴、花粉症のある人の特徴や花粉症症状の強さと関連する特徴を明らかにした。

 今回の研究では、Apple社のResearchKitを利用したiPhoneアプリ「アレルサーチ®」を対象期間中(2018年2月1日〜2020年5月1日)にダウンロードし、同意を得た11,284名を対象とした。

 花粉症の重症度は、各4点満点の5項目の鼻症状スコア、4項目の非鼻症状スコアを用いて36点満点で評価し、「アレルサーチ®」によって収集した、年齢や性別といった基本情報や、既往歴、生活習慣、花粉症の有無といった情報と、花粉症のある人の特徴および花粉症症状の強さと関連する特徴を検証。さらに、花粉症に対して行う予防行動について調査を行った。研究参加者の年齢は中央値34歳(四分位範囲23-46歳)で、56.4%が女性。居住地域は東京が2,510人(22.2%)、神奈川1,070人(9.5%)、大阪957人(8.5%)。また、研究参加者11,284名のうち、80.1% (9,041名)に花粉症の既往があった。

 花粉症のある人の特徴として「若年齢・女性・アトピー性皮膚炎・ドライアイ・花粉症シーズン中のコンタクトレンズ装用の中断※・排便回数が多いこと・短い睡眠時間」が明らかになった。さらに、花粉症症状の強さと関連する特徴として「若年齢・女性・呼吸器疾患・ドライアイ・トマトアレルギー・花粉症シーズン中のコンタクトレンズ装用の中断※ 、喫煙習慣、ペット飼育」が明らかになった。

 さらに研究を進めることで、花粉症の症状管理、重症化抑制や予防・治療が可能なスマホアプリの開発を目指し、将来のスマホアプリによる予測・予防・個別化・参加型医療を推し進める原動力となることが期待される。

※今回の解析は、両者の相関関係をみており、因果関係は示されいない。例えば、花粉症シーズン中のコンタクトレンズ装用中断と花粉症症状の強さの間には関連を認めたが、花粉症症状が強くなったため、花粉症シーズン中のコンタクトレンズ装用中断の可能性がある。そのため、花粉症症状の悪化を防ぐために花粉症シーズン中のコンタクトレンズ装用を継続することを推奨するものではない。

論文情報:【Allergology International】Individual characteristics and associated factors of hay fever: A large-scale mHealth study using AllerSearch

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