早稲田大学柴田重信研究室とベネッセ教育総合研究所は共同で、2021年6月に小学4年生から高校3年生までを対象とした「子どもの生活リズムと健康・学習習慣に関する調査」を実施。分析結果を取りまとめたところ、学年が上がるにつれて生活リズムが乱れている子どもの割合が増加していることが分かった。

 子どもの学習に関する研究を行うベネッセ教育総合研究所は、学習習慣の確立には健康的な生活習慣(睡眠、運動、食事、適切なメディア利用など)が身につけられていることが重要と考えている。

 そこで今回、健康と体内時計に関する研究(特に時間栄養学研究)を行っている早稲田大学 理工学術院 柴田重信研究室と共同調査を実施。小学4年生から高校3年生までを対象に、児童・生徒の生活習慣・学習習慣の現状を明らかにした。

 調査の結果、学年が上がるにつれて生活リズムの乱れが増加する傾向にあった。また、精神的な健康状態・成績が良い子どもは、普段から規則正しい生活をしている傾向がみられた。

 学年が上がるにつれて、平日・休日の睡眠時間が減少し、生活リズムの夜型化や平日と休日の生活時間のズレ(「社会的時差ボケ※」の発生)が大きくなる。また、寝る前のスマートフォン・携帯電話、パソコン、タブレット、テレビ、ゲームの画面を見る時間(スクリーンタイム)が増えており、疲れ・翌日の眠気にも影響。朝食の欠食頻度が増加する傾向がみられた。

 特に高校3年生は平日の睡眠時間が平均6時間36分と短い一方で、休日は8時間以上寝ている。平日にたまった睡眠不足(睡眠負債)を休日に寝だめして解消する傾向にあり、その結果、社会的時差ボケが平均で1時間を超えていた。毎日朝食を食べる子どもも高校3年生では全体の74.7%まで低下している。

 次に、成績を層別に分けたとき、それぞれの学校段階において、成績が上位の子どもほど、成績が下位の子どもに比べて、睡眠、食事、学習が規則正しく、寝る前のスクリーンタイムが無いと回答する傾向にあった。生活リズムの規則正しさと成績とに正の関連がみられた。普段からなるべく規則正しい生活リズムを心掛けることが重要だと考えられる。

 調査にあたった早稲田大学 理工学術院の柴田重信教授は「小学生の高学年から高校生までを対象に、食事、学習、睡眠の1日の中での不規則性や、平日と休日という1週間の中での不規則性に着目して、睡眠、成績や精神衛生との関連性を研究する上で非常に重要なデータを得ることができました。成績や学習習慣と、普段の生活習慣が関連していることは以前から知られていましたが、今回の調査で現状を細かく把握することができたと考えています。一方で、規則正しい生活リズムの重要性は、子どもや保護者にしっかりと伝わっておらず、今回のような研究結果を今後もっと社会にアウトリーチしていく必要があります」とコメント。

 今後の研究では、小学3年生以下の学年の子どもや保護者に調査対象を拡大することを予定している。

※平日と休日の間での生活リズムのズレ(社会的時差)により、体に不都合が生じること。今回の調査では、社会的時差も統一的に社会的時差ボケと呼ぶ。

参考:【ベネッセ教育総合研究所】早稲田大学 理工学術院 柴田重信研究室 ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活リズムと健康・学習習慣に関する調査2021」

大学ジャーナルオンライン編集部

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