東京大学、京都工芸繊維大学、電気通信大学らのグループは、歩行者の主観的な混雑感が「理想的な歩行速度」と「現実の歩行速度」とのギャップによって生じるとする新たなメカニズムを明らかにした。

 安全性や快適な歩行環境の確保を目指す歩行者研究において、従来は混雑感の物理指標として主に「密度」が採用されてきた。しかし、実際に密度指標が歩行者の主観的混雑感と一致するという実験的検証はなく、また速度など他の物理指標との比較もなされてこなかった。

 そこで本研究者らは、歩行者集団実験において、物理指標として「周辺密度」と「歩行速度」を計測し、同時に心理指標として「主観的混雑感」をアンケートにより調べることで、初めて両指標の関係を検証した。

 その結果、歩行者の主観的混雑感を推定する上では、密度よりも速度の方が優れていることが明らかとなった。実験からは、「密度が大きいほど混雑感が大きくなる」という従来研究通りの関係も得られたが、「歩行速度が小さくなるほど混雑感が大きくなる」という関係の方が、より明確に観測されたとしている。

 さらに、同じ速度で歩いていても、普段の歩行速度が速い人(一般に男性と若者)は遅い人(一般に女性と高齢者)よりも混雑を感じやすい傾向が認められた。すなわち、自身の理想的な歩行速度と実際の歩行速度のギャップが存在し、普段通りの速さで歩けないほど、歩行者は混雑を感じる可能性が示唆された。

 本研究成果は、密度で混雑感を推定する従来学説よりも正確に混雑感を測定・予測するために役立つ知見となり、快適な都市・交通施設の設計や群集マネジメントに資することが期待される。

論文情報:【Transportation Research Part F: Traffic Psychology and Behaviour】Revisiting the level-of-service framework for pedestrian comfortability:velocity depicts more accurate perceived congestion than local density

東京大学

明治10年設立。日本で最も長い歴史を持ち、日本の知の最先端を担う大学

東京大学は東京開成学校と東京医学校が1877(明治10)年に統合されて設立されました。設立以来、日本を代表する大学、東西文化融合の学術の拠点として、世界の中で独自の形で教育、研究を発展させてきました。その結果、多岐にわたる分野で多くの人材を輩出し、多くの研究成[…]

京都工芸繊維大学

「知と美と技」を探求する学風。 バイオ、材料、電子、情報、機械、環境、建築・デザインなど幅広い分野で、ものづくりを基盤とした「実学」の教育を行う。

豊かな人間性にもとづく技術の創造を目指して技を極め、人間の知性と感性の共鳴を求めて知と美の融合を目指し、教育研究の成果を世界に発信します。 千年の歴史をもつ京都の文化を深く敬愛するとともに、変貌する世界の現状を鋭く洞察し、環境と調和する科学技術に習熟した国際[…]

電気通信大学

人類の持続的発展に貢献する知と技の創造と実践を目指し、総合的実践力のある高度な技術者、研究者を養成する

電気通信大学は1918(大正7)年に無線通信技術者の養成機関として創設された社団法人電信協会管理無線電信講習所がその起源です。理工系の分野において科学技術イノベーションを先導し知識基盤社会を支える高度人材の育成と輩出を目指します。[…]

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