産業技術総合研究所と東北大学は、地震を生じる断層周辺の岩石の亀裂内で石英が析出する時間を算出する新しい計算モデルを開発。このモデルにより算出した石英脈形成時間が、地震の繰り返し周期と一致することを発見した。地震発生周期の予測などに役立つと期待される。

 海のプレートが陸のプレートの下に沈み込む場所では、プレート境界や巨大分岐断層で巨大地震が周期的に発生している。地震を生じる断層周辺の水の圧力(流体圧)が上昇すると、断層が滑りやすくなり地震が発生すると考えられているが、直接測定が難しく研究は進んでいない。

 今回研究グループは、過去に巨大地震が発生したとされる宮崎県の延岡衝上断層の周辺に分布する石英脈に注目。石英脈は地殻中の水に溶けたシリカが岩石亀裂内に石英として析出したもので、この現象により地下の水の溜まる場所、流れる方向、流体圧などが変わる可能性がある。そこで、石英脈の形成時間を算出できる計算モデルを開発した。

 延岡衝上断層に相当する深さ10 km、温度250 ℃の条件での計算を行った。その結果、石英脈(当該断層の平均サイズ)の形成にかかる時間は6年から60年程度、また、比較的大きな亀裂でもほとんどが300年以下で石英脈になることがわかった。

 今回の計算結果は、南海トラフなど巨大分岐断層で発生する巨大地震の繰り返し周期(100年から1000年)の時間スケールと相関性があった。これは、地震が発生しやすい流体圧まで上がる過程と石英脈形成過程との密接な関係を定量的に示した世界初の研究成果だ。また、地下の流体圧の時間的・空間的変化の評価は、地熱エネルギーの持続的な利用にも応用可能としている。

論文情報:【Scientific Reports】

大学ジャーナルオンライン編集部

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