脊髄損傷や頚椎症性脊髄症等の脊髄機能不全を呈する症例では、多くの場合、ビリビリ、チクチク、ヒリヒリと表現されるしびれ感が生じる。今回、長崎大学と畿央大学の研究者らは、このしびれ感に対する新たなリハビリテーション介入として“しびれ同調TENS”を開発し、しびれ同調TENSにより患者のしびれ感が著明に改善したことを発表した。
しびれ感は「感覚神経伝導路の障害によって起こる自発性異常感覚」と定義され、ADLやQOLが著しく阻害される一方で、未だ効果的な薬物療法やリハビリテーションは存在せず、しびれ感を改善させるための治療介入が確立されていないのが現状である。
これに対し、本研究者らは、経皮的神経電気刺激(TENS)を用いた新しい形の介入手法を見出した。脊髄機能不全症例の9名の患者に研究に参加してもらい、主観的なしびれ感の細かさ(ビリビリ、チクチクの間隔)と強度に、TENSの周波数と刺激強度を一致させ、これを“しびれ同調TENS”とした。しびれ同調TENSの実施前と実施中に痛みと感覚に関する評価を行い、即時効果を検証した。
その結果、多くの患者が「しびれ感とTENSによる電気が流れる感覚が打ち消し合ってどちらもなくなった」という感想を抱き、しびれ同調TENSにより即時的にしびれ感の著明な改善が観察された。また、しびれ感だけでなく、感覚障害やアロディニア(触るだけで痛い症状)も改善を認めた。
しびれ感とともにTENSの感覚までも減弱する現象は、これまでのTENSの理論では説明ができないといい、新たなメカニズムによりしびれ感が改善している可能性があると、研究者らは推察している。
しびれ同調TENSは、治療に難渋してきたしびれ感に対して効果を示し、リハビリテーションの介入領域を拡大することが期待できる。さらに今後は、しびれ同調TENSの長期的効果の検証や作用機序の解明に取り組むとしている。