広島大学の研究グループは、変形性膝関節症の進行に関与する、内側半月板を逸脱させる力学的特徴を明らかにした。

 膝関節の内側半月板は、本来、関節内に正しく位置することで衝撃を吸収する働きをもつが、関節外への逸脱が進むと衝撃吸収機能が低下し、関節変形の進行スピードを加速させてしまう。そのため、変形性膝関節症の進行の抑制にとって、半月板逸脱を予防することは極めて重要だが、これまで、変形性膝関節症者の半月板逸脱の増悪原因は不明だった。

 本研究では、超音波装置と三次元動作解析システムを用いて、歩行中に半月板を逸脱させる力の解明を試みた。歩行中の半月板の動きと関節の負荷を同時計測した結果、変形性膝関節症者の半月板の逸脱は歩行中に徐々に増悪し、地面を踏み込む瞬間に最も逸脱していることがわかった。これには、変形性膝関節症者の膝関節の内側に生じる力が健常な高齢者に比べて大きいことが関連しており、特に踏み込む瞬間に膝内側へ発生する力が半月板逸脱に関与することを確認したとしている。

 つまり、変形性膝関節症者は、地面を踏み込む際に生じる膝関節内側への力によって、日常生活中に半月板を関節外へ繰り返し逸脱させているという特有の力学的特徴が明らかとなった。

 本研究が解明した、歩行中の半月板逸脱を増悪させる力を効果的に減少させることが、変形性膝関節症の進行や発症の予防に繋がると考えられる。本研究成果は、半月板の逸脱を抑止する装具や歩き方の提案など、変形性膝関節症者の新規治療発展にも寄与することが期待される。

論文情報:【The Knee】Knee adduction moment is correlated with the increase in medial meniscus extrusion by dynamic ultrasound in knee osteoarthritis

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