関西大学では、教育改善やコロナ禍の学生の実態把握等を目的に、学生・教員に対して定期的にアンケート調査を実施しており、今回、2022年度の調査結果を公表した。学生版は有効回答数3,303件(回答率11.9%)、教員版は有効回答数159件(回答率47.6%)。

 コロナ禍で遠隔授業が開始された当初は学生の戸惑いが指摘されていたが、今回の調査で授業での困りごとは各項目減少していることがわかった。例えば「課題の多さ」は、第1回調査から53pt減少。これらの背景には、まず学生・教員ともに“遠隔慣れ”したことが挙げられる。

 授業の「満足度」は対面(62.6%)より遠隔(79.4%)の方が高く、「理解度」「参加意欲」「到達目標の獲得」の3項目については大きな差異はみられなかった。これまでの調査結果と比較すると、対面においては大きな数値の変化はないが、遠隔においては、特に「満足度」や「理解度」が大幅に上昇。その影響からか、大学における「学びの充実度」や「成長実感」においても、全学年で上昇する結果となった。

 「遠隔授業で経験した活動の頻度」を尋ねたところ、「問いかけ」「フィードバック」「LMS(学習管理システム)による課題レポート」が頻繁に行われている結果となった。一方で、「質疑応答」「双方向性ある活動」の頻度は低く、特に「双方向性ある活動」は44.5%と半数未満だった。また、2021年度の調査では、遠隔授業の学習意欲・効果を高めるために学生が最も必要とするポイントは、「教員からのフィードバック」だったが、今回の調査で最も声が多かったのは、「何度も復習できる教材が提示されていること」だった。

 学年ごとに「学生生活に関する満足度」を尋ねたところ、「友達や先生との交流」が全体平均60.8%/3年次生54.4%、「大学の施設利用」が全体平均78.2%/3年次生71.8%、「課外活動」が全体平均51.2%/3年次生39.9%、「キャンパスでの大学生らしい生活」が全体平均57.6%/3年次生48.2%、「授業時間外での友人との勉強に関する交流」が全体平均64.2%/3年次生53.8%となり、いずれの項目においても3年次生が最も低い値だった。また、同様に「大学における学びの充実度」について尋ねたところ、全体平均82.3%で、3年次生のみ76.2%と最も低く、8割を下回る結果となった。

 コロナ禍初年度入学である現3年次生(2020年度入学生)のこうした傾向は社会的にもたびたび話題となっており、関西大学としてはこれから始まる就活へのフォローの強化など、少しでも大学生活の満足度・充実度が向上するよう、手厚い支援を行っていく。

 また、教員に遠隔授業について「コロナ禍以前の対面授業と比較してどのような変化を感じたか」を尋ねたところ、「授業の理解度」「学びへの意欲・積極性」など、多くの項目で約7割が「良くなった」「変化なし」と回答。一方で、「双方向的な学びに対する意欲・積極性」に関してのみ、「悪くなった」の回答が約4割あり、依然として遠隔授業における双方向性の確保が課題であることがわかった。

 本調査を実施した教育推進部の山田剛史教授は、これからの大学における教育のポイントとして、「遠隔授業の教育効果として、知識伝達系の基礎授業などで優位性があるといえる。今後は遠隔授業の良さに磨きをかけつつ、対面授業の質を高めるための教育改善が一層求められる。対面の現場でもコロナ禍で蓄積したノウハウやデジタル環境をうまく取り入れていくことが重要」と述べた。

参考:【関西大学】プレスリリース「授業・学生生活に関する学生・教員アンケート調査~遠隔授業の困りごとは減少。最大利点は”反復学習”~」を配信 

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